製造ロットと使用期限を追えるようにするには、原料ロット・製造単位・製品ロット・出荷明細を数量付きでつなぎ、期限の種類と日付も一緒に記録します。前にも後ろにも調べられるようにするためです。
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「この原料を使った製品は、どこへ出荷した?」にすぐ答えるロット管理
2原料から3製品へ分かれる例を使い、原料、製造単位、製品ロット、出荷明細をつなぎます。混ぜる・分ける作業でも数量と期限をたどり、返品や訂正が起きた後の記録を残す方法が分かります。
影山 湧亮 / NeoLogic株式会社 代表取締役。元警視庁。現場業務の整理と生成AI活用・Webシステム開発を一貫して担当。
たとえば「この原料を使った製品は、どこへ出荷したか」。原料と製品に番号があっても、混ぜた記録と小分けした記録が別々では、その間をたどれません。
農林水産省は、食品を扱った記録を作成・保存することで、どこから来たかを遡り、どこへ行ったかを追えると説明しています。原料から出荷先まで、記録を一つずつたどる例で確かめてみてください(出典:農林水産省「トレーサビリティ関係」)。
原料Aからたどる例です(想定例)。1回の製造で原料Bと混合され、3つの製品へ小分けされ、A・B・Cの3社へ出荷されています。一本の経路なら「原料A→9月8日の製造→製品1→A社」です。調査範囲を確認するときは、同じ製造から分かれた製品2・3と、その出荷先もたどります。

図1 2原料ロットから3製品ロット、3社への追跡図(想定例)。実線は物の流れ、破線は返品、逆向きに読むと遡及です。
原料ロットと製造単位を分ける
原料ロットは仕入れた原料のまとまり、製造番号は自社で行った一回の製造、製品ロットは出来上がった品を区別する番号です。製造番号と、包装・小分け後の製品ロットを分けて記録します。同じ日付をロット番号にするだけでは、同日の複数回製造や混合・分割の関係を表せません。日付に連番を足しても、親子の対応記録は別に必要です。
食品の期限は確認済みの条件を記録し、安全性や回収の要否は専門の担当者が判断します。2026年9月7日に原料Aを70 kg、原料Bを50 kg受け入れ、翌8日の製造へ60 kgと40 kgを投入します。受入担当は仕入先と原料番号、製造担当は実際の投入番号と数量を入力し、確認担当が受入票・投入票と照合して「未確認」から「照合済」へ変えます。番号が読めない原料を推測で確定しません。
| 識別する対象 | 架空例の番号 | ひも付ける記録 |
|---|---|---|
| 受け入れた原料 | R-A01/R-B01 | 仕入先・受入日・受入量 |
| 一回の製造 | M0908-01 | 原料番号・実投入量・日時 |
| 小分け後の製品 | P0908-01〜03 | 製造番号・出来高・期限 |
| 出荷の明細 | S01〜S05 | 製品番号・納品先・数量 |
混合・分割・詰め替えを記録する
原料と製品を一対一の欄に押し込まず、「投入明細」と「分割明細」を製造番号でつなぎます。農水省の製造・加工業編にも、原料と製造ロットを対応付ける記録方法が示されています(出典:農林水産省「食品トレーサビリティ『実践的なマニュアル』各論 製造・加工業編」(PDF))。成形条件のように、製造中の設定まで製造番号と結ぶ例は、射出成形の条件変更を生産実績へ結ぶ方法にあります。
投入した100 kgを混合し、製品1へ40 kg、製品2へ32 kg、製品3へ24 kgを分け、4 kgを廃棄として記録します。同日10時には、最初の容器から次の容器へ100 kgを詰め替えています。容器を替えても由来は変わらず、移動量を新たな原料投入として二重計上しません。製造担当が入力し、確認担当は移動前後の識別と量を照合します。
数量と期限を確認する
数量は工程ごとに照合します。この例では、原料残は70−60=10 kg、50−40=10 kgです。製造工程は100=40+32+24+4+0 kgで、最後の0は仕掛残量です。受入残と仕掛残は別物です。包装資材、追加投入、水分の増減は例から除外しています。実際の工程に蒸発・追加水・サンプル採取などがあるなら、その記録を足さずに差を「廃棄」で埋めません。
製品は40 kg・32 kg・24 kg、廃棄は4 kgです。追跡には、この出来高と原料・製造・製品の対応を使います。各製品に含まれる原料の重さを計算で配分する場合は、別の前提が必要です。
3製品の記録と、均一混合を仮定した原料の配分計算を見る
混合後の製品ごとの原料量は、実測と計算を区別します。下の表では「均一に混合され、廃棄にも同じ比率で原料が含まれる」と仮定し、投入比60:40を出来高へ配分しました。例えばP0908-01の参考量は24 kgと16 kgです。これは含有量の実測値ではありません。均一性を確認できない場合は配分を確定せず、関与した原料とのつながりを残します。
| 記録項目 | 製品1 | 製品2 | 製品3 |
|---|---|---|---|
| 原料ロット | R-A01/R-B01 | R-A01/R-B01 | R-A01/R-B01 |
| 製造番号 | M0908-01 | M0908-01 | M0908-01 |
| 原料別の配分参考量※ | A 24.0 kg、B 16.0 kg | A 19.2 kg、B 12.8 kg | A 14.4 kg、B 9.6 kg |
| 製品ロット | P0908-01 | P0908-02 | P0908-03 |
| 製造日 | 2026-09-08 | 2026-09-08 | 2026-09-08 |
| 期限(賞味期限) | 2026-10-08 | 2026-10-08 | 2026-10-08 |
| 出荷先 | A社/B社 | B社/C社 | C社 |
| 数量(出来高/出荷) | 40 kg/40 kg、内訳 A社30・B社10 | 32 kg/28 kg、内訳 B社20・C社8 | 24 kg/20 kg、内訳 C社20 |
| 訂正履歴 | なし | C01:S03の数量、22 kg → 20 kg | 訂正なし、返品T01:2 kg保留 |
表1 製品ロット別の対応表(架空例、2026年9月11日17時時点)。
※配分参考量は製造への実投入量60/40 kgに基づく値です。製品へ配分した計57.6/38.4 kgに、廃棄への配分2.4/1.6 kgを加えると元の投入量に戻ります。製造への実投入量は投入明細で一度だけ集計します。
期限は日付だけでなく、何の期限かを残します。この例の原料の「使用期限」は社内使用限度日を指し、R-A01は9月20日、R-B01は9月18日という架空の確認済み条件を置きます。製品側は賞味期限10月8日として、別の欄へ転記します。いずれも実際の期限を設定する見本ではなく、架空の規格書と保存条件に結び付けた記録値です。
期限内という表示を、使用・出荷の許可にしない
原料の最短期限をそのまま製品へコピーしたり、詰め替え日から期限を延長したりしません。消費者庁は消費期限・賞味期限の設定に科学的・合理的根拠を求める説明をしています。期限設定の判断と、確定した条件の記録は別の作業です(出典:消費者庁「食品の期限表示に関する情報」)。
受入担当が原料の期限種別・日付・保存条件・根拠資料を転記し、製造前に確認担当が実物と照合します。製品は製造者側が確認した期限条件を記録します。開封や保管条件の変更があれば、適用条件を再確認します。Excelの「日付内」は日付比較にすぎず、空欄や確認待ちを「使用可」「出荷可」に変えません。
出荷先までたどる
出荷先を抽出するには、出荷伝票の表紙ではなく明細へ製品ロットを残します。同じ製品ロットを複数社へ出す場合も、一社へ複数ロットを渡す場合も、ロットと納品先ごとに行を分けます。出荷担当が入力し、確認担当が現物ラベルと出荷明細を照合します。農水省のマニュアルも、製造ロットと出荷先を対応付ける方法を示しています(出典:農林水産省「食品トレーサビリティ『実践的なマニュアル』各論 製造・加工業編」(PDF))。
| 出荷明細 | 製品ロット | 納品先 | 数量 kg | 出荷日 |
|---|---|---|---|---|
| S01 | P0908-01 | A社 | 30 | 2026-09-09 |
| S02 | P0908-01 | B社 | 10 | 2026-09-09 |
| S03※ | P0908-02 | B社 | 20 | 2026-09-09 |
| S04 | P0908-02 | C社 | 8 | 2026-09-09 |
| S05 | P0908-03 | C社 | 20 | 2026-09-09 |
想定例。各社の納品先は一拠点とします。※S03は訂正後の値。実際の出荷日は9月9日、訂正の記録日は9月10日です。
原料Aを起点に、投入明細から9月8日の製造へ、分割明細から3製品へ、出荷明細からA・B・C社へ進めます。出荷累計はA社30 kg、B社30 kg、C社28 kgです。反対に製品3から戻ると、同日の製造を経て原料Aと原料Bの両方へ到達します。共通原料の影響を調べるなら、そこから再び全製品へ進みます。配分参考量が小さい製品を、計算だけで調査対象から外しません。
戻りや訂正を残す
9月10日、B社向けの数量を22 kgから20 kgへ訂正したとします。元の22 kgを消さず、22 kgを打ち消す行と、正しい20 kgの行を追加します。訂正の記録には元の明細、訂正前後、理由「転記誤り」、申請者、確認者、確定日時を残します。これは返品ではなく記録の訂正です。出荷を集計すると22−22+20=20 kgになり、製品2の全出荷量は28 kgになります。
9月11日にはC社から製品3が2 kg戻り、返品を元の出荷明細へ結び付けます。未出荷残は製品2と3の各4 kg、計8 kgです。返品2 kgは別の隔離保管とし、手元の製品は計10 kgになります。出荷累計88 kgは履歴として残し、返品を差し引いた86 kgは「未返品出荷相当量」と呼びます。取引先で使用・販売された量は不明なので、取引先の現在庫とは呼べません。
返品を受け入れた担当者が元出荷・ロット・数量・保管先を記録し、品質側の担当者は再利用や廃棄の判断を別に残します。この例の返品は保留のままです。再加工する場合は旧製品を新しい製造の投入元として結び、元の系譜を切りません。本テンプレートの計算対象に再加工・再出荷は含めていないため、扱う場合は台帳と計算範囲の追加が必要です。
自社で試すときは、逆引きと数量を別々に試す
記録例・空欄入力付きのExcel台帳には、記録例と同じ項目の空欄入力、数量照合・配分計算、製品別対応表、確認票を用意しました。印刷用の確認票(PDF)も、記入例と未記入版を使えます。まず一回分の製造を入れ、原料から出荷先へ、製品から全原料へ往復します。その後に数量と期限条件を確認してください。未入力は未確定のまま残し、ゼロと分かっている量だけ0を入力します。記録の保存先・期間と、訂正できる担当者も運用開始前に決めます。
一人で更新し少数の工程を追えるなら、既存台帳を整える方法から試せます。候補の既製品で、混合・分割・期限条件・取消・返品をこの通し例どおりに再現できるなら、追加開発を前提にする必要はありません。多段階の再加工、独自の容器移動、設備連携で関係が途切れる場合に、設定変更・連携・追加開発を比較します。
この例では、原料から出荷先へも、製品3から二つの原料へもたどれます。ただし、返品2 kgは隔離中で、期限内という表示も使用許可を意味しません。記録がつながること、数量が合うこと、安全性を判断することを分けて扱います。
配合・酒造など、工程が異なる場合
化学・配合製造のバッチ記録は配合版と投入差、酒造の仕込み・容器移動・製造記録は仕込みから詰口までの記録が中心です。食品の通し例とは期限や工程の条件が異なります。
原料になる収穫物を畑と栽培期間まで戻って調べたい場合は、農業の作業・収穫・出荷の記録例があります(農業の作業・収穫・出荷を畑と作期でたどる記録例)。食肉の原料を牛の個体までさかのぼる場合は、牛の個体・群・場所の移動記録が同じ考え方です。
一部を試験へ回し、再試験の結果が届く場合は、試料と結果資料の版を対応付けます(試料と結果資料を追う|分割・再試験・結果版の管理)。
在庫の増減や引当可能数は、在庫管理を作る前に|残数と注文に使える数の違いで説明しています。自社の運用へ広げる際は、扱う品目に合う案内を参照してください。
- 食品製造の原料・ロット・期限管理:原料と製品の期限条件も含めた記録。
- 業種をまたぐロット・製造履歴の追跡:混合・分割・再加工の親子関係。
参考出典
- 農林水産省「トレーサビリティ関係」(2026年6月25日更新)
- 農林水産省「食品トレーサビリティ「実践的なマニュアル」製造・加工業編」(2014年3月、6.2・6.3、冊子38・48ページ)(PDF)
- 消費者庁「食品の期限表示に関する情報」(期限表示に関する関連通知)
出典確認日:2026年9月15日。原料・製造・出荷先の対応付けと、期限設定に科学的・合理的な根拠が必要であるという説明を参照しています。数量、期限日、訂正・返品の例は説明用の架空値です。


