牛の台帳は、個体を固定したまま「群への所属期間」と「場所にいた期間」を別々に残すと整理できます。出荷は予定と実績を分け、実際に場外へ移った時点で場内の所属・所在を終了します。
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頭数は合っているのに、いる牛が違う。出荷まで1頭ずつ追う台帳の作り方
群が変わった牛と、牛舎を移った牛を同じ記録にしていませんか。5頭の記入例で、個体、群、場所を追い、日ごとの頭数と残る牛を見比べます。出荷予定と実績、入力の遅れや訂正も扱える台帳の考え方です。
影山 湧亮 / NeoLogic株式会社 代表取締役。元警視庁。現場業務の整理と生成AI活用・Webシステム開発を一貫して担当。

たとえば出荷後、群Bに残る牛は2頭。台帳も現場も群Bは2頭なのに、台帳には出荷した牛が残り、別の牛が抜けている。頭数だけを合わせていると、この取り違えに気づけません。農場全体では4頭が残っています。1頭の群替えと出荷を追い、頭数と個体の両方を合わせる方法を見ていきます。
頭数の計算だけで終えず、その数を構成する個体まで照合します。
5頭の牛の事務記録を使います(想定例)。表内のコードは農場内の管理用で、公的な個体識別番号とは別です。飼養や健康状態、出荷してよいかは、担当者が別途判断します。
農場内のコードと、公的な番号を混ぜない
家畜改良センターの説明では、公的な牛個体識別台帳は牛1頭ごとの識別情報や所在等を記録します。一方、本稿のC01などは、農場内の表を結び付けるためのコードです。公的な個体識別番号と置き換えず、個体台帳の別列に対応を持たせます。この補助台帳への入力だけでは、公的な届出を行ったことにはなりません。
公的番号の保存と届出の確認先
公的番号の検索は10桁で入力する案内になっています。表計算では番号を文字列として保存し、先頭の0が消えないようにします。配布シートの見本では実在番号との混同を避け、この列を空欄にしています。C01〜C05を公式の検索・届出に使わないでください。
出生・異動などの届出や、届出済み情報の修正は、家畜改良センターの農家向けマニュアル(現行版の案内)とそこから案内される公式手続で確認してください。2026年10月26日に確認した案内は令和8年10月改訂版です。届出方法は10〜20ページ、記録の修正・消去は21〜27ページに分かれています。牛の番号体系や制度を、豚・鶏にそのまま適用しないことも前提です。
1頭の群替えを、場所の移動と分けて追う
群は飼養・管理上のまとまり、場所は牛舎や区画を指します。本稿では同じ時点に1頭が所属する「主な管理群」を一つに限定します。用途別の検索リストやタグへの重複登録とは別の考え方です。作物なら、牛の群と場所にあたるのが、栽培の区切りである作期と、区画である圃場です(農業の作業・収穫・出荷記録のまとめ方)。
| 分ける対象 | 想定例 | 履歴に残す内容 |
|---|---|---|
| 個体 | C01〜C05 | 公的番号との対応。移動・出荷後もコードを再利用しない |
| 群 | G01=群A、G02=群B | 個体ごとの所属開始・終了日時 |
| 場所 | P01=東区画、P02=西区画、P03=南区画 | 個体ごとの所在開始・終了日時 |
5頭のうち、群AにいるC03の動きを追います。9月1日は群Aに3頭、群Bに2頭。翌2日にC03が群Bへ移ると、群Aは同じ番号G01のまま2頭、群Bは3頭になります。「群A」という名前だけを保存すると、どの時点の2頭・3頭かを特定できません。群を終了して後日同名の別群を作る場合は、新しい群IDにします。
さらに9月3日には、群Bの3頭が西区画から南区画へ移ります。所属する群はそのままに、場所の履歴を更新します。逆に、同じ区画にいる牛の所属群だけを変更する場合は、群所属の期間だけを区切ります。群IDから場所を一意に決めず、個体の所在地を別にたどれるようにします。
9月2日9時に群Bへ移した牛は、その時刻から群Bに数えます。群Aとの二重計上を防ぐためです。
台帳を設定する人向け:所属期間の数え方
期間の判定は「開始日時を含み、終了日時は含まない」に統一します。C03のG01所属を9月2日09:00で終え、G02所属を同時刻に始めます。終了が空欄なら継続中、集計日時が開始前なら対象外です。これは配布台帳の設計例で、公的制度や製品の共通仕様ではありません。
移した日時と、入力した日時が違うとき
移動は1頭・1件を基本に、記録ID、個体コード、種別、移動前後の群ID・場所ID、実際の移動日時、入力日時、入力者、確認者を記録します。群ごと移した場合も対象個体の明細を残し、頭数はその個体数から求めます。場所だけの移動では、前後の群IDを同じにします。
見本の移動記録E06は、この牛が9月2日09:00に群Aの東区画から群Bの西区画へ移った記録です。入力は翌3日08:00ですが、所属が変わる基準は2日の実際の移動日時です。訂正後の履歴で過去日を再集計する場合と、その日に分かっていた内容を再現する場合は異なるため、配布シートは前者の集計だと明示しています。
訂正は元の行を消さず、取消状態にして訂正先の記録を追加します。見本ではE09-v1のC05の移動先P01が誤記だったため、E09-v2でP03に訂正し、元ID、訂正理由、入力日時、確認者を残しました。取消行は現在の集計から除きますが、理由を追うために保存します。
確定した変更を群所属表・所在表に反映したら、同じ牛の期間が重なっていないか、開始より終了が早くないかを調べます。場内にいるはずの牛に有効な群・場所がない場合も調べる対象です。不明な日時を都合よく埋めず、入力担当へ差し戻し、元記録と現場の個体確認に戻ります。
図1 個体を特定し、実際の移動を記録してから照合・受渡しへ進む流れ(架空例)。
出荷後に残るのは、どの牛か
ここまで追ったC03は群Bに残し、同じ群のC05を出荷する場面を加えます。9月4日に出荷ID S01を作り、5日10:00を予定日時として登録しても、4日の場内頭数は5頭のままです。実際には5日11:00に場外へ移ったため、実績日時と実績記録E10をS01に結び付け、その時刻でC05の場内在籍、群所属、所在を終了します。個体台帳は削除しません。
次の表は各日23:59の状態です。単位は頭、日時は日本時間です。9月1日から5日まで新たな導入や出生はなく、場外への移動はS01の1頭だけとしています。
| 2026年9月 | G01の個体/頭数 | G02の個体/頭数 | 場内計 |
|---|---|---|---|
| 1日 | C01・C02・C03/3 | C04・C05/2 | 5 |
| 2日 | C01・C02/2 | C03・C04・C05/3 | 5 |
| 3日 | C01・C02/2 | C03・C04・C05/3 | 5 |
| 4日 | C01・C02/2 | C03・C04・C05/3 | 5 |
| 5日 | C01・C02/2 | C03・C04/2 | 4 |
9月5日の照合は「5−1=4」だけでは足りません。G02に残る個体がC03・C04であることを、現場で確認したコードと照らします。C03・C05の2頭なら頭数は同じでも個体が違います。所在不明、別の牛の記入、二重所属、予定段階の減算をそれぞれ切り分けます。
配布XLSXには空欄版、記入例、項目説明を収録しています。日次の頭数は所属期間から、所在の一致は所在期間から計算し、現場で確認した個体・群・場所は別欄に入力します。例の5頭だけでなく、どの個体を照合対象にしたかを明示し、未確認の行を「一致」にしない運用にします。
シート内の「一致」は、台帳と入力した照合結果がそろったことを示します。記録担当が実際の移動を確認した日時と、確認者を残して初めて、場内記録として確定させます。
図2 5頭の所属と場内頭数を日ごとに照合する想定例。各日23:59、日本時間。9月5日はC05の出荷実績を反映しています。
照合用記入シートをダウンロード(Excel・記入例と空欄版)して、移動や出荷の記録と照合を確かめられます。
場内の訂正と、公的な届出の修正を分ける
見本のE09-v1をE09-v2へ訂正しても、それだけで公的台帳の記録は変わりません。逆に、公的な届出の修正が済んでも、場内表の訂正前の行が集計に残れば、同じ牛を別の場所へ数えてしまいます。
実際の記録では、「場内記録ID」「公的番号」「公的な届出への対応が必要か」「手続の確認先」「届出後の確認結果」を対応付けます。群を変えただけなのか、管理者・飼養施設などの届出事項に関わる移動なのかを、農場の担当者が公式の案内に照らして確認します。見本の場所P01〜P03から届出の要否を自動で決めません。
訂正前の記録を残すのは、何を直したかを追うためです。公的な届出の記録を直す手順は、場内表の取消行を作る操作とは別に進め、公式側の確認がまだなら「確認待ち」と残します。
既存クラウドから取り込める記録を確かめる
例えばFarmnoteの公式ガイドには、連携手続きをした場合に、届出済みの牛・活動情報を畜産クラウド経由でFarmnote Cloudへ取り込む案内があります。これは、場内補助表から公的台帳へ自動届出する話とは別です。所属期間・所在期間の取出し、訂正履歴、利用権限や契約上の条件は、実際の利用環境で確かめます。
| 選択肢 | 合う条件 | 先に調べること |
|---|---|---|
| 表を整理して続ける | 担当と更新手順を固定できる | 履歴を消さない運用、照合・保管の担当 |
| 専用サービスを使う | 必要な牛の記録が標準機能に合う | 番号対応、群と場所の履歴、出力項目・権限 |
| 端末入力を補う | 現場で記録する必要がある | 識別方法、圏外保存の要否、再送時の重複防止 |
専用サービスを元の記録とし、補助表と突き合わせる併用もできます。どの記録を基準にするかを決め、公的番号、個体コード、群ID、場所ID、実績日時、状態、出荷IDを受渡確認表で対応付けます。出力可否と形式は未確認欄を残し、1件の移動と訂正を試してから範囲を決めます。
まずはC03の群替えとC05の出荷を、個体からも日付からもたどれるか試してください。既存ツールで残る受渡しや現場入力の課題が具体的になったら、現在の帳票と未確認項目をそろえると、相談したい内容を説明しやすくなります。
個体で追う記録と、分けたり合流したりする群の記録の違いは、養殖の魚群管理でも比べられます(養殖の魚群をたどる|分養・合流・給餌・出荷)。
参考出典
- 家畜改良センター「牛個体識別制度」
- 家畜改良センター「ご利用の手順について(個体識別番号検索)」
- 家畜改良センター「農家向けマニュアル(案内ページ)」
- Farmnote公式ユーザーガイド「6-4. 牛・活動の一括登録(畜産クラウドデータ自動取込)」
初回の出典確認日:2026年9月15日。農家向けマニュアルの案内は2026年10月26日に再確認し、令和8年10月改訂版へ更新しました。具体的な届出・修正は、同案内から最新の手続を確認してください。




