研究・試験の試料を追えるようにするには、元の試料、分割した試料、試験の記録、結果資料の版をIDでつなぎ、再試験と報告書の訂正を別々に記録します。
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この結果PDFは、どの分割試料のもの?試料と結果資料を追う番号の付け方
受付番号だけでは、分割した試料と再試験の結果を取り違えることがあります。非臨床の記入例で、依頼、試料、試験、結果の版を対応付けます。旧結果と残試料の扱いを書けるExcel・確認表PDF付き。
影山 湧亮 / NeoLogic株式会社 代表取締役。元警視庁。現場業務の整理と生成AI活用・Webシステム開発を一貫して担当。
たとえば「この結果PDFは、元の容器と三つの分割試料のどれに対応するのか」。受付番号だけで資料をまとめていると、再試験や報告書の訂正が加わったとき、現物と記録の関係をたどりにくくなります。試験をやり直した場合と、報告書だけを訂正した場合の記録をたどれば、相手に渡す結果と残った試料の返却状況を把握できます。
非臨床の研究・試験で受付や記録を担当する方に向けた、小規模な管理例です。臨床・医薬品等の規制記録の代替や、試験方法・測定値の妥当性、認定取得の判断には使いません。
元の試料と、分割した試料の関係
受付番号は依頼全体の入口です。そこに含まれる現物には試料IDを付け、分割した現物には新しい試料IDを付け、元の現物の親試料IDも記録します。試験項目は「何を調べるか」、試験IDは「どの一回の実施か」を表します。同じ項目でも再実施したら別の試験IDが必要です。結果資料は資料IDと版の組で識別します。
120 gと25 gの試料を受け付け、120 gの方をA・B・Cの3点へ分割する例です(想定例)。本例の「試料5点」は受付試料2点と分割試料3点の合計であり、受付試料が5点あるという意味ではありません。Aには項目α、Bには項目βを割り当て、Cは予備として残します。IDは例示用の短縮形です。実運用では採番する担当と範囲を決め、欠番や取消後の番号も別の対象に再利用しません。
図1 試料の分割から試験・結果版・返却廃棄までの関係(想定例)。
受付担当R01が依頼IDと受領した現物を照合し、分割担当が親子関係を登録します。確認担当C01が、依頼書・容器ラベル・台帳の対応を見て受付情報を確定します。名前だけが一致していても、数量や親試料が不明なら確認待ちに戻します。
分割したAとBでは、結果資料を更新する理由も異なります。
| 試料 | 起きたこと | 新しく残す記録 | 試料の追加消費 |
|---|---|---|---|
| A | 初回の条件記録が欠け、試験をやり直す | 新しい試験T-003と結果R-003-v1。初回も保持 | 再試験で10 gを使う |
| B | 試験はそのまま、報告書の試料名の誤記を直す | 同じ試験T-002の結果をR-002-v2へ。旧版も保持 | なし。元の15 gを二重計上しない |
試験のやり直しでは試料を追加で使い、報告書だけの訂正では使いません。別の番号を付けると、この違いをたどれます。
試料はどこに、何g残っているか
分割時は、元の数量、各分割量、分割後の親試料の残量、日時、担当者を残します。本例は120=40+50+30 g、分割損失0 g、親の残量0 gと置いています。実物で差が出たら、秤量差や損失の理由を別に調べ、数字を合わせるために子試料の量を書き換えません。親の受入量と子の分割量を合計すると、同じ物質を二重に数えてしまいます。
移動は「現在地」の上書きだけで済ませず、移動元・移動先、日時、数量、払出担当、受領者を履歴に追加します。保管場所は保管庫と棚まで特定します。温度などの保管条件は、対象試料に合う承認済みの条件記録へ結び付けます。
S-001-Aは40 gから初回と再試験で各10 gを消費し、返却前の残量は20 gになります。同じ容器の移動は出庫・入庫の両方に同一IDを記録するため、在庫量を増減させません。履歴の数量と現物の照合が済んでいなければ、表計算の残量が合っていても「確認済」にしないことが判断の境目です。
一回の試験から、条件と結果へたどる
試験IDには、使用した試料ID、試験項目、方法版、条件記録ID、実施者、開始・終了日時、元データIDを結び付けます。実施者が入力し、確認担当が元資料との対応を確かめてから結果の扱いを決める設計です。方法名だけを登録しても、後で手順が改訂されたときに、どの版で実施したかは分かりません。
試料Bの試験は、担当者が2026年9月2日14時から14時30分まで実施した記録です。使用した方法の版はM-B v2.0。条件の記録、元データ、初版の報告書を、この一回の試験へ関連付けます。日時はすべて日本標準時です。ファイル名に試験IDを含めるだけでなく、台帳に保存先を持たせ、担当交代時には実際に開けるかも確かめます。
元データと確認用資料、配布した報告書は役割を分けて保存します。本テンプレートの保存先は文字列の例示で、測定ファイルそのものは付属しません。実運用では保存先の権限、変更履歴、バックアップ、保管期間と責任者を別に定めます。
試験のやり直しと、報告書だけの訂正
再試験は新しい試験、訂正は既存の結果資料の変更です。この二つを同じ「最新版」欄で処理しないようにします。Aの初回では条件記録の欠落が見つかったため、理由と確認担当の承認を添えて再試験を追加します。初回の試験と結果も保存し、再試験から参照できるようにします。条件記録の欠落のような問題を繰り返さないための、原因と対策の記録は、不適合を「対策済み」で終わらせない管理方法で扱っています。
Bは報告書の試料名の誤記だけを訂正し、結果資料を初版から第2版へ進めます。訂正理由、直前の版、作成者、確認者、確認日時、配布先と差替え通知を残します。試験そのものは1件のままで、消費量15 gをもう一度計上しない点も再試験との違いです。
本例の「報告対象」は、担当者が記録の対応を照らし合わせた資料を指します。科学的な妥当性の判断は別に行います。再試験をしたという理由だけで新しい結果を採用せず、旧結果と理由を残したうえで、所定の責任者が報告対象を判断します。都合のよい値だけを残す運用にはしません。
記録の対応表:同じ試料が複数行に現れるため、数量は合計しない
対応表は2026年9月5日16時時点です。表1と表2は同じ行番号で対応します。
対応表は同じ試料を試験・結果版ごとに複数行へ展開しています。Aの返却20 gやBの廃棄35 gが繰り返されても合算しません。数量は試料IDごとに1行の試料台帳と移動履歴で数えます。「—」は本例では対象なしを表し、未確認の項目は空欄に紛らせず「保留」と理由を記録します。
表1 識別と結果版
| 行 | 依頼ID | 試料ID | 親試料ID | 試験ID | 結果版 |
|---|---|---|---|---|---|
| 01 | REQ-001 | S-001 | — | — | — |
| 02 | REQ-001 | S-001-A | S-001 | T-001 | R-001-v1/参考保持 |
| 03 | REQ-001 | S-001-A | S-001 | T-003 | R-003-v1/報告対象 |
| 04 | REQ-001 | S-001-B | S-001 | T-002 | R-002-v1/旧版保持 |
| 05 | REQ-001 | S-001-B | S-001 | T-002 | R-002-v2/報告対象 |
| 06 | REQ-001 | S-001-C | S-001 | — | —(予備・試験なし) |
| 07 | REQ-001 | S-002 | — | T-004 | R-004-v1/報告対象 |
表2 方法・所在・再試験理由・返却廃棄
| 行 | 方法版 | 実施者 | 保管場所 | 再試験理由 | 返却廃棄 |
|---|---|---|---|---|---|
| 01 | — | — | 現物なし(全量分割) | — | 120 gを3分割/残量0 g |
| 02 | M-A v1.0 | E01 | 依頼者A(返却済) | T-003で再実施:条件記録欠落 | 残20 g返却/RET-001 |
| 03 | M-A v1.0 | E01 | 依頼者A(返却済) | T-001の条件記録欠落 | 残20 g返却/RET-001 |
| 04 | M-B v2.0 | E02 | 現物なし(廃棄済) | —(再試験なし) | 残35 g廃棄/DISP-001 |
| 05 | M-B v2.0 | E02 | 現物なし(廃棄済) | —(試料名の誤記訂正) | 残35 g廃棄/DISP-001 |
| 06 | — | — | 依頼者A(返却済) | — | 30 g返却/RET-001 |
| 07 | M-A v1.0 | E02 | 保管庫A/棚02 | — | 残20 g保留/返却先未確定 |
返却・廃棄後に残る試料まで追う
結果資料がそろっても、試料の管理は終わりません。返却は返却先、対象ID、数量、日時、受領記録を残します。廃棄は対象物に応じた条件と承認、実施者、実施日時、実施記録を照合します。予定、承認、実施、実施確認は別の状態として扱い、処理予定だけで残量をゼロにしない設計にします。
9月5日、Aの残20 gとCの30 gを依頼者Aへ返却し、RET-001に記録します。Bの残35 gは、事前承認した条件とDISP-001の実施記録を照らし合わせて廃棄済とします。実際の廃棄方法や保管期間は、試料の性質、契約、適用条件によって別に判断します。
一方、S-002は試験で5 gを消費した後の20 gが棚02にあり、返却先が未確定です。受付担当R01を問い合わせの担当として「保留」を残し、依頼全体は完了にしません。本例の外部受入量145 gは、消費40 g、返却50 g、廃棄35 g、保管20 gに分かれます。数量差が0 gでも、返却先の確認が終わったことにはならないのです。
表を使い始めるときと、システム化を考えるとき
試料追跡テンプレート(Excel)には、対応・試料・試験・結果・移動・確認の各表に記入例と空欄版があります。印刷用の記録確認表(PDF)も利用できます。まず空欄版へ1依頼を入力し、別の担当者が試料から結果資料と残量までたどれるかを確かめてください。数量未入力は0 gと区別し、確認状態が未入力の履歴は未確定として残します。確認済み履歴を集計する数式と、現物の確認・承認・完了判断は分けています。
件数が少なく、更新担当を絞り、履歴と権限を別途管理できるなら、台帳で始める案があります。既製LIMSの標準機能で親子関係、再試験元、結果版、確認手順が表せるなら、重複する開発や二重台帳は不要です。既存の測定設備を残して固有の受付・照査・報告書だけを補いたい場合に、連携や追加開発の範囲を検討します。本例を使い、旧版を保持できるか、未確認のものを保留にできるかを比べてください。
LIMSの製品説明を読むときの注意点
LIMSは試料や試験情報を管理するシステムです。西川計測株式会社のc-WeLS公式説明には、依頼と試料の関連付け、階層ごとの添付・コメント、ファイルの保存が示されています。c-WeLSは販売管理オプションを除く他システムとの連携に対応していません。装置データ取込みの箇所はWeLSの説明なので、利用する製品と装置の対応範囲を確認してください。ここで紹介する採番・確認手順は、小規模な記録業務に向けた運用案です。
管理方法を相談するとき
研究側の試料・条件・結果を整理する場合は、研究・開発の試料と実験データ管理をご参照ください。受託側の受付から記録確認・報告事務を整理する場合は、試験・検査受託の受付・試料管理が対応する相談先です。現在の依頼書と、個人や取引先を特定できる情報を除いた試料の親子関係・方法版・結果ファイルの例があると、既製品で足りる範囲と補う範囲を整理できます。
試験した試料を原料や製品に結び付ける際は、分割・混合後のロットを追う記録も参考になります(製造ロットと使用期限を原料から出荷まで追う方法)。
参考出典
出典確認日:2026年9月15日。依頼と試料の関連付け、階層ごとの添付・コメント、ファイル保存と連携条件を参照しています。発行日・更新日・製品の版番号はページに表示を確認できませんでした。装置取込みの説明はWeLS表記です。採番・確認手順と数量例は、この資料を参考にした運用案です。

