出荷先から「この出荷は、どの畑の、どの時期に育てたものか」と尋ねられたとき、「北畑のこまつな」だけでは、前年の記録や別の日の収穫と区別できません。
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「北畑のこまつな」では答えられない。出荷35kgを畑と作期までたどる記録
出荷したこまつなが、どの畑の、いつの栽培から来たかをたどります。北畑と南畑の記入例で、前年の栽培、複数回の収穫、混載出荷を整理。記入例と空欄版のExcel、確認チェック表を使えます。
影山 湧亮 / NeoLogic株式会社 代表取締役。元警視庁。現場業務の整理と生成AI活用・Webシステム開発を一貫して担当。

取引先へ出荷したこまつな35kgから、元の畑と栽培をたどってみます(想定例)。
北畑で2026年春に育てたこまつなを、5月1日に40kg収穫。そのうち35kgを、5月3日に取引先Aへ出荷しました。
この35kgから、収穫日、今年の栽培、北畑へ戻れるように記録します。北畑の番号は変えず、前年のにんじんと今年のこまつなには別の栽培番号を付けます。後で別の畑の荷物と一緒に出荷しても、このつながりを残します。水産でも、いけすの魚群を分けたり合わせたりすると、同じつながりが切れやすくなります(養殖の分養と合流の記録例)。
同じ北畑でも、前年のにんじんと今年のこまつなは別
圃場は「場所」、作期は「その場所で行う一まとまりの栽培」と考えます。本稿では一つの作期IDを一つの圃場へ対応させ、作物・開始日・終了日を持たせます。年が変わっても同じ場所なら圃場IDを変えず、前年の作物名を今年の名前で上書きしません。
農研機構の「栽培管理支援システム Ver.1.1 利用マニュアル」紹介ページには、「圃場登録と作付け登録」の章が案内されています。この区別を手がかりに、ここでは日々の作業と出荷までつなぐ台帳を設計します。
2圃場それぞれに前年・当年の2作期を置くため、栽培の番号は計4つになります。日付・作物・数量は、記録のつながりを示すための設定です。
開始日はこの例では作業開始、終了日は片付け完了としています。何を区切りにするかを管理担当が決め、終了前は終了日を空欄にして「進行中」とします。複数回収穫しただけでは作期を分けず、同年の次の栽培には別の作期IDを付けます。年をまたぐ栽培も、年末だからという理由だけで分割しません。
前年・当年の4作期を比べる
表1a 圃場IDを継続し、前年・当年の作期を分ける(説明用の架空例)
| 圃場ID | 作期ID・作物 | 開始日/終了日 |
|---|---|---|
| 北畑(F01) | S25A/にんじん | 2025-03-01/2025-07-10 |
| 南畑(F02) | S25B/だいこん | 2025-09-01/2025-12-20 |
| 北畑(F01) | S26A/こまつな | 2026-04-01/2026-05-10 |
| 南畑(F02) | S26B/こまつな | 2026-04-02/2026-05-11 |
いつ、どの栽培で作業したか
現場では、作業日・担当・作期ID・作業内容を入力します。圃場IDと作物は作期台帳から引く形にすると、別の組合せを手入力する箇所を減らせます。作業日と、後から入力した日も分けて残します。
表1b 作業・資材を、対象の作期に結び付ける(説明用の架空例・当年抜粋)
| 作業日・作期ID | 担当・作業ID | 資材数量・資材単位 |
|---|---|---|
| 2026-04-01/S26A | 担当A/W26A | 不織布 20 m/クリップ 12 個 |
| 2026-04-02/S26B | 担当B/W26B | 不織布 15 m |
資材は名称・数量・単位を一組で残します。不織布20mとクリップ12個を「32」と合算しても意味がありません。Excelでは作業W26Aに対して資材明細を2行に分けています。複数資材の行数を、そのまま作業件数と数えないようにします。農薬・施肥が適正かは、公式基準と担当者に聞いて判断してください。
日々の作業は、担当者が区画と栽培時期を選んで記録するところから始められます。すべてを別の人が再確認するかは、取引先の記録要件と担当人数に合わせて決めてください。担当・日付・栽培時期が分からない記録は、推測で埋めず確認待ちにします。
70kgの収穫を、収穫日ごとにたどる
収穫は、一つの作期でも収穫日・収穫回ごとに別の収穫ロットを付けます。ロットとは、後から同じまとまりとして追える識別番号です。単位や計量段階が違う数量は、条件をそろえるまで合算しません。
表1c 複数回の収穫を別ロットにする(説明用の架空例・当年抜粋)
| 畑・収穫ロット(作期ID) | 収穫日・収穫回 | 収量(kg) |
|---|---|---|
| 北畑・H2601(S26A) | 2026-05-01/第1回 | 40 |
| 北畑・H2602(S26A) | 2026-05-02/第2回 | 30 |
| 南畑・H2603(S26B) | 2026-05-02/第1回 | 50 |
北畑の今回のこまつなは40kgと30kgで計70kg、もう一つの作期は50kgです。照合表では、それぞれ作期S26A・S26Bに対応します。いずれも同じ計量段階の収穫量をkgで記録した想定です。同じ収穫を「当日分」と「累計」の両方で足すと二重計上になるため、台帳は当該ロットの数量だけを持ちます。
収量が未確認なら空欄のまま、確認状態を「未確認」にします。空欄は収穫ゼロとは違います。付属台帳では数式による点検と、人による確認欄を分けています。計算が合っただけで記録が確定した扱いにはしません。
畑の違う荷物を、一緒に出荷するとき
出荷記録は「一つの出荷ロットと、一つの収穫ロットの組合せ」を1行にします。一度の出荷に複数圃場の荷物を載せるなら、出荷ロットは同じでも明細を分けます。逆に、一つの収穫ロットを複数の出荷先へ分けることもできます。
この例は、収穫ロットを区別したまま一緒に運ぶ混載です。
表1d 混載出荷は、元の収穫ロット別に数量を残す(説明用の架空例・2026年5月3日)
| 出荷ロット・出荷先 | 収穫ロット | 出荷数量(kg) |
|---|---|---|
| X2601/取引先A | H2601 | 35 |
| X2601/取引先A | H2603 | 25 |
| X2602/取引先B | H2601 | 5 |
| X2602/取引先B | H2602 | 25 |
| X2602/取引先B | H2603 | 20 |
取引先Aへ計60kg、取引先Bへ計50kgを出荷します。最初に収穫した40kgは、35kgと5kgに分かれて届きます。表を見ると、最初の収穫分が二つの出荷先へ分かれたことが分かります。明細には出荷数量だけを入れ、収量40kgを出荷行ごとに書き写して足し上げません。
2026年5月3日時点の当年分は、収穫120kg-出荷110kg=差引残10kgです。内訳は、北畑の最初の収穫分が0kg、2回目が5kg、もう一つの畑の収穫分が5kgです。この例は廃棄・自家消費・返品なしの前提です。差引残は帳簿上の数なので、現物は数えて確かめます。
出荷前には、出荷担当が収穫ロット別の計量記録と出荷明細を突き合わせ、出荷先と数量を見比べます。管理担当が別にいる場合は、差引残の確認を分担できます。残量がマイナスなら数量・単位・重複を調べ、ゼロへ丸めて隠しません。元の圃場や内訳が不明な荷物は、面積比などで自動配分せず照合待ちにします。
区画・記録方法を広げるときの確認
同時に作物を分けるなら区画を識別し、圃場を分割・統合した場合は旧IDと新IDの対応を残します。過去記録の圃場IDを一括置換すると当時の範囲が分からなくなるためです。多年生作物など、この区切りが合わない場合は管理期間を先に定義します。
配布台帳には確認者・確認日の欄もあります。見本では、管理担当が4月2日に区画札と作業記録を照合した例を入れています。日々の再確認を求められる業務で使い、少人数なら入力担当が兼ねられます。確定後の訂正は元の値・訂正理由・訂正者・訂正日が分かる記録を別途保存します。通信できない場所では仮番号を付けた紙や端末メモを使い、転記時に同じ作業を二重登録していないか確かめます。
箱・袋・kgが混在する場合、箱数だけから重量を推定しません。換算するなら品目・規格ごとの確認済みの換算条件と適用日を別に持ち、変動する場合は実測重量を残します。付属台帳の収穫・出荷はkg専用で、別単位を入れると「数量・単位要確認」と表示します。
ここでいう混載は、元の収穫ロットを区別できる状態の出荷です。物理的に混合・加工した場合は、新しいロットと投入元の対応を追加します。廃棄・自家消費・返品も日付と数量を別の増減記録に残し、本台帳だけを完全な在庫台帳として使わないでください。
一つの出荷番号から、二つの畑へ戻ってみる
出荷X2601は、北畑のH2601から35kg、南畑のH2603から25kg、計60kgの混載です。出荷番号だけを一行にまとめて北畑へ結ぶと、南畑25kgの記録が落ちます。逆に、北畑のH2601はX2601へ35kg、X2602へ5kgと、二つの出荷へ分かれています。
混載・分割の照合教材(ZIP)の harvest では、収穫40kg・30kg・50kgと出荷5明細を照合します。2026年10月26日の計算では、H2601の残り0kg、H2602とH2603の残りは各5kgでした。H2601を起点に調べると、X2601の35kgとX2602の5kgへ戻れます。
| 変えて試すこと | 検出したい不一致 |
|---|---|
| H2601から、さらに別の出荷へ1kgを追加 | 収穫40kgに対して計41kg。残り−1kgを0へ丸めない |
| X2601の明細を出荷番号だけでまとめる | 混載した二つの収穫ロットを失っていないか |
| 同じ出荷の再取込 | 出荷番号と収穫ロットの組合せを照合し、数量を二重に足していないか |
教材で実行したのは数量とつながりの照合です。実際の現物調査や回収範囲を確定した結果ではありません。自社では出荷明細の控えと照合し、別の畑の分まで同じ収穫として表示されないことを、正引きと逆引きの両方で確かめてください。
自分の出荷記録を、今のソフトでたどれるか
まず既存の営農ソフトで必要な記録と出力ができるかを確かめます。アグリノートの公式ページでは、圃場ごとの作付履歴、作業・収穫・出荷の記録、Excel・CSV出力が案内されています。アグリノートヘルプセンターの収穫記録の出力説明には、収穫ID・作付ID・圃場ID・数量・単位・収穫ロット番号が示されています。
機能名だけで決めず、自分の混載・見直し・引継ぎの記入例で運用できるかを試します。下表は同じ条件で比べるための表です。料金とプラン別の条件は、各社の最新資料で確かめてください。
| 比較する点 | 同じ記入例で確かめること |
|---|---|
| 圃場・作付 | 北畑を残したまま、前年のにんじんと今年のこまつなを別に取り出せるか。 |
| 作業・資材 | 作業日・担当・単位を保持し、未確認の記録を識別できるか。 |
| 収穫・出荷 | 北畑の収穫を2社へ分けた記録と、南畑と混載した記録を追えるか。 |
| 出力・引継ぎ | ID・単位・ロット別明細を出力し、別の担当者が再照合できるか。 |
標準機能と運用でこの例を再現できれば、既製品を優先できます。入力者が限られ、確認担当が原本を一つに保てるなら、表計算から始める選択もあります。既存ソフトからID付きで出力できる場合は、ソフトを残して出荷側への受け渡しだけを補う方法も検討できます。
独自の出荷明細や販売管理との連携が必要になった段階では、現在の台帳、出力サンプル、混載・分割の例をそろえると相談範囲が明確になります。
次の作期から台帳を分ける
まず出荷記録を一つ選び、収穫した日と畑まで戻れるかを確かめてください。つながらない箇所が見つかったら、その収穫と栽培の記録から補います。Excelで台帳一式を試す場合は「例_」を見ながら、同じ列の「空_」へ記入します。圃場→作期→作業資材・収穫→出荷明細の順に登録し、「照合」と配布用チェック表で見直します。空欄版は各100行分の入力・計算欄を用意しています。行を増やす場合は参照範囲も広げてください。
記入例と空欄版:作業・収穫・出荷台帳(Excel)をダウンロード
収穫後に原料を混ぜたり製品へ分けたりする場合は、原料から製品ロットと出荷をたどる例へつなげられます(製造ロットと使用期限を原料から出荷まで追う方法)。
参考出典
出典確認日:2026年9月15日。公式ページの機能説明を参照しています。台帳のID・数量・確認手順は本稿の設計と架空例です。

