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配車と請求、どこまで任せる?3案の試算で見るシステム開発費

運送会社の配車・請求を例に、初期費用を抑える案、必要範囲を含める案、後から広げる案を比べます。作業量、移行、連携、運用が費用へどう影響するかを、業務の範囲と3年間の支出から考えられます。

配車システムの機能と外部連携を見比べて開発範囲を決める。

システム開発費は、含める作業とその量、担当する役割の単価で決まります。予算に合わせるには、今回必要な業務と手作業で残せる業務を分け、その範囲で初期費用と継続費用を比べます。

たとえば、同じ「配車と請求のシステム」を頼んだのに、見積書の金額が大きく違う。そんなときは、請求書の作成、過去データの移行、会計ソフトへの連携が、どこまで入っているかを見ます。名前が同じシステムでも、完成後に任せられる仕事は違います。

単価・工数・利用料を仮に置いた説明用の試算では、3年間の社外支払いは、請求データの出力までに絞るA案が384万円、請求書の作成までつなぐB案が616万円、2年目に現場入力と会計連携を加えるC案が784万円です(金額は税別)。

初期費用と3年間の社外支払額(想定例、単位:万円・税別)

項目 A B C
初期費用 240 400 400
拡張費用 0 0 120
月額 4 6 初年度6/以降8
3年間の社外支払額 384 616 784

運送会社の配車・請求を3案で比べる

1拠点、管理担当5人、車両20台、月300件の配車を扱う会社を考えます(想定例)。困りごとは、配車の記録を請求用に書き直す作業です。現在の請求・会計ソフトを使いながら、どこまでを新しいシステムへ任せるかを比べます。

A:請求データの出力までに絞り、初期費用を抑える

受注・配車・進捗を共有し、請求用データを書き出すところまで作ります。請求書は既存ソフトで作成し、取引先などの台帳と未完了案件を移します。過去履歴は旧資料を参照するため、最初に移す量を絞れます。

請求ソフトへの取込みや照合を担う人が必要です。月末の請求作業を既存ソフトで続けられるなら選べますが、その作業をなくしたい会社には範囲が足りません。

B:請求書の作成までつなぐ

配車の記録から請求書を作成するところまでつなぎ、帳票1形式と請求内容の照合を含めます。過去12か月、月300件とした約3,600件の履歴を移行します。運転手から実績を集める作業と、会計ソフトへのファイル取込みは管理担当が行います。

配車から請求までの転記を減らすことが今回の目的なら、この案を推奨します。自動化する範囲が目的に合い、現場の入力方法まで一度に変えずに始められるためです。

C:2年目から現場入力と会計連携を加える

初年度はBと同じ範囲で使い始め、2年目開始時に、運転手20人のスマートフォン入力と会計ソフト1製品への連携を加えます。管理担当は入力漏れ・訂正と会計結果の確認を続けます。

段階導入には、事務所の運用を先に整えられる利点があります。一方で、追加開発、接続の確認、操作説明には別の費用が必要です。連携先の仕様や料金、端末の準備を確認し、追加時期に見積りを見直します。

表1 3案で任せる業務と残る仕事(想定例)

比較する点 A 初期を抑える B 必要範囲を含む C 後から拡張
最初の範囲 受注・配車・進捗、請求データ出力 配車から請求書作成まで 初年度はBと同じ
移す履歴 台帳と未完了案件 左記+過去12か月 初期はBと同じ
残る仕事 既存ソフトで請求書作成 実績入力、会計への取込み 初年度はBと同じ
追加する範囲 当面なし 当面なし 2年目から現場入力・会計連携

工数と金額を同じ単価で計算する

単価・工数・利用料は、3案を比べるための設定値です。NeoLogicの販売価格とは異なります。単価は80万円/人月、金額は税別、比較期間は利用開始後36か月とします。工数には設計・実装・移行・確認・操作説明を含めます。

設計・実装・移行などの工数内訳

表2 初期工数の内訳(想定例、単位:人月)

工程 A B Cの初期
設計・要件整理 0.5 0.75 0.75
実装 1.5 2.5 2.5
データ移行 0.25 0.5 0.5
確認・テスト 0.5 1 1
操作説明 0.25 0.25 0.25
合計 3 5 5

Aの384万円は、初期240万円+月4万円×36か月です。Bは400万円+月6万円×36か月で616万円。Cは初期400万円+追加120万円+月6万円×12か月+月8万円×24か月で784万円です。Cの追加工数は1.5人月で、2年目開始時に拡張する前提です。

計算用の想定例では、移行作業の内訳をA 20万円、B・C 40万円と置きます。この金額は初期費用に含めています。Cの追加120万円には、接続に必要な台帳の対応付け・照合8万円を含みます。これらを総額へもう一度足すと二重計上になります。

条件を自社用に置き換えるには、費用シナリオ表(Excel)を使えます。記入見本と入力用(PDF)には同じ計算条件を収録しています。スマートフォンでは、案ごとの縦読み版(PDF)も利用できます。

相場・公表価格・個別見積りの違い

「システム開発 費用 相場」と検索して見つかる金額は、そのままでは自社の予算に使えません。調査値、企業の公表価格、個別見積り、説明用の想定例という、条件の違う情報が混ざっているためです。次の4つを分けて読むと、自社の予算に使える数字かどうかを確かめられます。

情報の種類 確かめる条件
調査値 調査年、対象となった案件、件数、費用の区分
企業の公表価格 含む機能、利用人数、導入作業、別料金になるもの
個別見積り 自社の対象業務、数量、除外事項、未確定条件
説明用の想定例 計算のために置いた単価・工数・期間

製品の月額料金に、導入作業や追加開発が含まれるとは限りません。「平均」という金額も、集計対象が分からなければ比較の範囲を決められません。数字の出どころを確認してから、自社との条件の違いを見ます。

「在庫管理システム」「予約システム」といった類型別の価格表も同様です。拠点数、扱うデータ、訂正の方法、連携先が変われば、必要な作業が変わります。公表価格は、その会社の提供範囲を知る手がかりになります。

232万円・168万円の差で、どの仕事を減らしたいか

AとBの3年支出差は232万円、BとCは168万円です。AからBでは請求書作成、BからCでは現場入力と会計連携へ範囲が広がります。違う仕事を減らす案なので、金額差だけで一律に上位・下位を付けません。

たとえば社内作業を1時間5,000円と仮置きし、差額を時間だけで換算すると、A→Bの232万円は3年で464時間、月平均約12.9時間です。これは削減実績や導入効果ではなく、社内の月末作業がどれだけ残るかを調べるための目安です。Cの追加機能は2年目からなので、168万円を24か月で見ると月7万円、同じ仮単価で月14時間に当たります。

作業時間の価値は、社外への支払額と同じ現金の節約になるとは限りません。現在かかる時間、導入後も残る点検、追加機能を使う期間を調べ、支払予算と作業負担を別々に比較します。相見積りの条件をそろえる表へ、この範囲と期間をそのまま渡せます。

拡張が1年遅れると、総額は下がっても利用できる期間は短くなる

C案の現場入力・会計連携を、2年目開始から3年目開始へ遅らせた場合を比べます。追加開発120万円と、拡張前の月6万円・拡張後の月8万円は同額のままとする説明用の計算です。

拡張する時期 36か月の社外支払額 B案616万円との差 追加機能を使う期間
13か月目から 784万円 168万円 24か月
25か月目から 760万円 144万円 12か月

25か月目なら400+120+6×24+8×12=760万円。総額は24万円下がりますが、追加機能を使える期間は半分です。B案との差額を追加機能の利用月数で割ると、13か月目開始は月7万円、25か月目開始は月12万円となります。1時間5,000円の作業時間だけで比べる仮定なら、それぞれ月14時間と24時間に当たります。どちらも削減実績ではありません。

配布Excelの「記入見本」でD15の拡張開始月を13から25へ変え、D7の総額を確認できます。開始月が未定ならD15を空欄にし、総額が空欄へ戻ることを確かめてください。未定を「追加なし」の0へ置き換えると、別の案になってしまいます。

実際には、開始を遅らせると外部サービスの仕様や追加開発の費用も変わり得ます。24万円安くなることだけで延期を決めず、その間に続く転記作業と、追加時点の見積りを並べます。

画面以外の作業も工数に含まれる

人月は作業量の単位

1人が1か月かけて行う作業量が1人月です。人月を使う見積りでは、作業量に単価を掛けて開発費を計算します。3人月だから必ず3か月で終わる、3人なら1か月で終わる、という意味ではありません。作業の順序や確認待ちによって期間は変わります。

単価は、実装だけを担うのか、設計や進行管理まで担うのかという役割で変わります。人月は、機能の数だけで決まらず、例外処理や連携をどこまで見込むかで動きます。単価を聞くときは、その単価にどの役割と責任が含まれるかを一緒に聞きます。

移行・連携・使い始める準備

運送会社なら、取引先ごとの表記をそろえる、未請求の運行を移す、移した金額を元の帳簿と合わせる、といった作業が必要です。過去の全履歴を移す場合と、未完了案件だけを移す場合では量が違います。データの整理を誰が行うかも決めます。

会計への連携では、渡す項目を合わせるほか、送信に失敗した場合や同じ請求が二度届いた場合を確かめます。帳票は、レイアウトだけでなく、締日、端数、訂正時の扱いまで確認します。操作説明や問い合わせ先の準備も、使い始めるための作業です。

契約では、工程ごとの仕事、成果物、報酬、変更時の扱いを確かめます。「請負」「準委任」という名称だけで支払条件を決めつけず、合意する内容を読みます。IPAの情報システム・モデル取引・契約書は、仕様や検収方法などを発注側と開発側が話し合うための参考になります。

予算を調整するときに残す点検

あとから足しても業務が回る集計や、手作業で代替できる連携は、後回しにする候補です。ただし、請求額を確かめる工程まで削ると、安く始めても請求のやり直しが増えるおそれがあります。

請求では、運行実績と請求明細の件数・合計、端数、取消や訂正後の金額を照合します。Aでも、書き出したデータを既存ソフトに取り込んだ結果を確認します。自動化の範囲が小さくても、お金の確認は必要です。

また、運転手が他人の実績や請求額を見られないか、誰が金額を直せるかを確かめます。誤ってデータを消した場合にどこまで戻せるかも試します。確認の深さは扱う情報と業務への影響に合わせ、必要な作業量を見積書へ含めます。

初期費用と継続費用から予算を決める

月額は対応内容と利用料から積み上げる

想定例の月額は、保守対応・環境利用料・既存ソフト等の利用料の順に、Aが2+1+1万円、Bが4+1+1万円、Cの拡張後が5+2+1万円です。保守対応には平日日中の問い合わせ窓口と不具合の調査・軽微な修正を想定し、追加機能や大規模な改修は別途としています。実際には受付時間、対応内容、月額内の作業範囲を見積りで確かめます。

表の社外支払額には、社内担当者の人件費を含めていません。Aなら請求書作成、Bなら実績入力、Cなら入力漏れの確認など、残る仕事を別欄に書きます。安い案ほど社内作業が少ないとは限りません。新しい端末の購入や、表にない追加対応も別に予算を確認します。

調査資料の「保守は開発費の何%」を読むとき

JUASの「ソフトウェアメトリックス調査2020」80ページには、稼働後の費用を示す年平均の割合があります。4つの値は、次のように分子と分母が異なります(出典:JUAS原資料(PDF))。

稼働後の費用 割合の分母 原資料の年平均
自社開発の保守 初期開発費 7.8%
自社開発の追加開発 初期開発費 12.0%
パッケージ本体の追加導入+保守 本体+導入費 10.9%
カスタマイズ等の追加導入+保守 カスタマイズ+導入費 31.4%

これは2020年版の調査資料です。初年度から5年度までで対象件数が異なり、年平均欄に共通の件数は示されていません。純粋な保守と追加開発も別の費用です。この割合を自社の開発費に掛けて現在の保守予算を決めず、必要な対応と利用料を個別に積み上げます。

未確定の条件を見積りへ渡す

移すデータが整っているか、請求書が何形式あるか、会計ソフトが接続に対応するかによって、追加作業は変わります。比較表には、条件を確かめる人と期限も書き添えます。含む作業を一つずつ確かめると、金額の幅が残る理由が分かります。

相談の準備はシステム開発の相見積り|条件をそろえる比較表、支払時期や契約の違いは開発費の一括・分割・月額払い|総額と終了条件で確認できます。開発する範囲自体に迷う場合は、SaaS・パッケージ・独自開発|3年・5年の費用比較も判断材料になります。

予算と目的に合わせて、最初の範囲を選ぶ

  • 初期費用を抑え、請求書は今のソフトで作れる: Aのようにデータ出力までに絞る。取込みと金額の照合を誰が続けるかも決めます。
  • 配車から請求書までの転記を減らしたい: Bの範囲で比べる。請求書の形式と、訂正・取消の扱いを見積りへ含めます。
  • 現場入力や会計連携も必要だが、一度には変えにくい: Cのように導入時期を分ける。追加開発、月額、操作説明の費用を合わせて予算化します。
  • 条件がまだ決まっていない: 「今回任せる仕事」と「手作業で続ける仕事」を先に分ける。移すデータや連携先の不明点を、そのまま見積りの確認事項へ渡します。

この3案の金額は説明用の試算です。自社の予算は、同じ作業範囲・比較期間・継続費用で見積りをそろえて判断してください。

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参考出典

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