相見積りは、対象範囲、数量、必要な品質、別費用、未確定事項をそろえてから、価格と担当体制を比べます。記載のない作業を0円として計算せず、誰が対応するかも聞きます。
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300万円と360万円の見積り、条件をそろえたら同じ額に。相見積りの比べ方
安い見積りにも、移行や操作説明が入っているでしょうか。当初の記載から質問、回答後の比較までを追います。初期費用と12か月の総額、担当不在時の引き継ぎをそろえて比べる記入例です。
影山 湧亮 / NeoLogic株式会社 代表取締役。元警視庁。現場業務の整理と生成AI活用・Webシステム開発を一貫して担当。

たとえば、2社から届いた見積りは300万円と360万円です(想定例)。移行と操作説明までそろえると、どちらも初期の支払額は360万円になりました。さらに利用開始後12か月分を比べると、今度は396万円と408万円の差が残ります。
対象は、製造業の顧客・案件管理です。金額はすべて税抜きです。金額が変わった理由と、差が残った理由を、2社への質問からたどります。
相談前の5項目を同じ内容で渡す
見積書が手元にある場合も、最初に渡した依頼内容へ戻ります。各社に違う説明をしていたら、比較したい条件をまとめて再共有してください。まだ決められない箇所には「未定」と書き、誰がいつ確認するかを添えます。
依頼概要の記入例
この案件では、開発会社へ次の内容を同じ条件で渡します。
| 項目 | 記入例 |
|---|---|
| 目的 | 担当者が不在でも商談状況と次の対応を見られるようにしたい。 |
| 利用者 | 営業8人・事務1人・管理者1人の計10人。同時利用は最大5人。 |
| 必須範囲 | 顧客の登録・検索、案件の進捗管理、担当変更、CSV出力。計5画面。 |
| 既存資料 | 顧客CSV約3,000件と現在の案件管理表。 |
| 権限や記録 | 担当者は自分の担当分、管理者は全件を閲覧・編集。顧客・案件の変更者と日時を記録。 |
希望は「着手から4か月以内に利用開始、初期400万円以内・月額4万円以内、税抜き」です。会計ソフトとの直接連携と過去の案件履歴の移行は後回しにします。顧客データの重複や空欄の量は、この時点では分かっていません。
必須の範囲と後回しにする範囲を分けると、予算を超えたときにも相談しやすくなります。機能名だけで伝わりにくければ、「担当者が休みでも次の対応を見たい」のように、仕事の場面を書きます。例外や権限の整理は、開発相談前の要件整理|受注から出荷の記入例でも説明しています。
金額差の理由を分けて確かめる
まず、見積りの段階を見ます。要望メモから出した概算と、データや仕様を調べたあとの見積りでは、未確定事項の量が違います。比較表に段階と前提を書き、いつ、何が分かれば金額を見直せるかを聞きます。
費用を比べるときは、画面数に加えて複数の条件を確かめます。対象業務と数量、要件整理の深さ、権限や性能などの品質条件、移行と連携、テストや利用開始の支援、公開後の保守を確認します。担当者の経験や配置、作業単価、納期、不明な条件への見込みも金額に関わります。
例えば、同じ「顧客3,000件の移行」でも、整理済みのファイルを取り込む仕事と、重複を調べて直す仕事では作業が異なります。IPAのCoBRA法に関する資料も、開発工数が変動する要因を評価する考え方を説明しています。古い資料のため、ここでは工数変動の考え方だけを参照しています。
条件をそろえても差が残ったら、単価や担当体制など、どこが違うかを聞いて判断します。金額差の理由を一つに決めつける必要はありません。費用の内訳を詳しく整理したい場合は、システム開発費は何で決まる?予算別3案の比較が続きになります。
見積書の記載を比較表へ移す
次は、先ほどの案件に届いた2社の概算見積りです。金額はすべて税抜きです。
| 受領時の記載 | A社 | B社 |
|---|---|---|
| 初期費用 | 300万円 | 360万円 |
| 移行 | 顧客データ移行は別見積り。 | データ移行一式を含む。件数と作業内容は未確認。 |
| 操作説明 | 見積書に記載なし。 | オンライン説明1回を含む。 |
| 月額費用 | 3万円。保守と稼働環境を含む。 | 4万円。保守と稼働環境を含む。 |
「移行一式」とあるB社も、件数・作業内容は未確認です。A社の説明会も、記載がないだけでは含むかどうか分かりません。空欄を都合よく埋めず、次のように書き分けます。
- 対象外:今回は依頼しないと決めたもの。必要な作業なら、自社や別の依頼先が担当することも記します。
- 別見積り:必要ですが、提示額に含まれず、追加金額を聞く必要があるもの。
- 未確認:含むかどうか、作業内容、数量、金額のいずれかが分からないもの。
この段階でA社を「300万円で全部できる」と読むのは早すぎます。判明している金額と、まだ分からない費用を分けて残します。
同じ質問を送り回答で比較表を更新する
2社に同じ条件を提示し、回答を得てから比較表を書き直します。この想定例では、要件と顧客データの見本を見たうえで、両社が再見積りを出したものとします。
移行の質問と回答
質問:整理済みの顧客CSV3,000件を、試行1回・本番1回で移し、件数を照合する条件です。重複の整理と移行は誰が担当し、追加費用はいくらですか。
- A社の回答:重複・空欄の整理は発注者。試行・本番・件数照合を40万円で追加。
- B社の回答:重複・空欄の整理は発注者。同じ移行作業は初期費用に含む。
この回答で、A社には40万円の追加費用が分かりました。同時に、B社の「移行一式」にも重複・空欄の整理は含まれないと分かります。安いほうに追加がある、という話だけでなく、両案とも社内で準備する仕事が残るという発見です。
操作説明の質問と回答
質問:利用者10人向けのオンライン説明を2時間・1回行い、操作手順書を納品する条件です。含まれる費用と追加費用を教えてください。
- A社の回答:手順書は初期費用に含む。説明会は20万円で追加。
- B社の回答:手順書と説明会を初期費用に含む。
ここでは、手順書の有無ではなく、説明会の扱いが違いました。同じ2時間・1回の説明をそろえるため、A社に20万円を足します。
権限やバックアップも具体的に聞く
「セキュリティ対応あり」だけでは比較しにくいため、担当者・管理者の2区分、顧客・案件の変更者と日時の記録、同時利用5人、日次バックアップ7世代、復元の試験1回を含むかを聞きました。この例では、両社とも初期費用に含み、継続運用は月額費用に含むという回答です。
資料や口頭で決めた内容は、最終的な見積書や契約の別紙にも反映します。IPAの情報システム・モデル取引・契約書 第二版では、業務内容、役割分担、納入物、費用や検査期間などを個別契約で定める構成になっています。比較時の質問を整理する参考になります。請負と準委任のどちらで契約するかで、報酬の払い方と完成の扱いも変わります(請負と準委任の比較)。
回答後にそろった条件と残った違い
| 比較項目 | A社 | B社 |
|---|---|---|
| 見積りの段階 | 要件とデータ見本を見た再見積り。 | 要件とデータ見本を見た再見積り。 |
| 移行 | 整理済み顧客CSV3,000件。試行1回・本番1回・件数照合。40万円を追加。 | 同じ移行内容を初期費用に含む。 |
| 権限・記録 | 担当者・管理者の2区分。顧客・案件の変更者と変更日時を記録。 | 同左。 |
| 操作説明・成果物 | 説明会2時間・1回を20万円で追加。手順書、仕様書、ソースコード、テスト結果を納品。 | 同じ説明会と成果物を初期費用に含む。 |
| 保守・担当体制 | 平日9〜17時、メール受付。主担当1人。不在時は別担当へ引継ぎ。月額3万円。 | 同じ受付条件。主・副担当2人で共有。月額4万円。 |
発注者側には、顧客データの重複・空欄の整理、画面の点検、利用者と権限の決定が残ります。誰が担当できるかを社内で確かめてください。開発会社の費用に含まれない作業も、利用開始までに必要な仕事です。
初期費用と12か月分の費用を並べる
質問の結果、A社には移行40万円と操作説明20万円が追加されました。B社はどちらも基本の初期費用に含まれます。第三者サービスの追加契約は、この例では不要と分かっています。
| 費用の内訳(税抜き) | A社 | B社 |
|---|---|---|
| 基本の初期費用 | 300万円 | 360万円 |
| 移行の追加費用 | 40万円 | 0円(基本に含む) |
| 操作説明の追加費用 | 20万円 | 0円(基本に含む) |
| 初期費用の合計 | 360万円 | 360万円 |
| 月額費用 × 12か月 | 3万円 × 12 = 36万円 | 4万円 × 12 = 48万円 |
| 初期費用+12か月分 | 396万円 | 408万円 |
条件をそろえると、初期費用は両社とも360万円になりました。利用開始後12か月分を加えると、A社396万円、B社408万円で、12万円の差が残ります。12か月はこの例の比較期間です。実際には利用予定に合わせ、両社を同じ月数で計算してください。
両社の保守は平日9〜17時のメール受付で、合意した仕様との不一致の調査・修正と稼働環境を含みます。機能追加は別見積りです。A社は主担当1人で不在時に引き継ぎ、B社は主・副担当の2人で共有するという違いがあります。対応開始や修正完了までの時間は、この想定例では未定です。
主担当者が休みの日、誰が対応を始めるか
たとえば、担当者が休みの日に案件の一覧を開けなくなった場面を、両社へ伝えます。「受付メールは誰が読みますか」「代わりの担当者は設定と直近の変更を見られますか」「いつ調査を始め、いつ状況を連絡してもらえますか」と聞きます。
二人いるという回答だけでは、不在時に引き継げるかまでは分かりません。一人を主担当とする案でも、代わりの担当が必要な資料を持ち、合意した時間に調査を始められるかが比較点です。受付、対応開始、復旧完了の時刻を分けて確認し、12万円の差にどんな支援が含まれるかを確かめます。
ここでは、社内の整理・点検作業を金額に換算していません。比較表には担当と作業を残します。外部への支払いが分からなければ0円にせず、判明分の小計と未確認事項を併記します。費用が分かるまで、全体でいくらになるかは確定できません。
記入見本と空欄版を使って、手元の見積書を整理できます。Excelには、金額と月数を入力すると費用を計算する欄があります。
12万円の差を、何の対価として読むか
396万円と408万円の差は、12か月で12万円、月あたり1万円です。ただし、B社の副担当が実際に対応できるかは未確認なので、「月1万円で必ず復旧が早くなる」とは読めません。主担当が不在の日の受付から調査開始までを、A社・B社へ同じ質問で確かめます。
この案件でデータ整理を社内が行えず外注するなら、その追加費用を両案へ入れます。担当者が決まらない段階では、社内で作業を引き受けられる前提で比較表を確定しないでください。初期総額が同じになった後は、残る社内作業と保守条件が選ぶ理由になります。
小計が356万円と表示されても、A社が安いとは決められない
配布Excelを複製して「記入見本」のB63にある移行40万円を空欄にします。これは、移行が不要なのではなく、費用がまだ分からない場合です。12か月の条件では、次のように表示が分かれます。
| 確かめる欄 | A社の表示 | 意味 |
|---|---|---|
| B74:期間分の判明額 | 356万円 | 移行費を含められていない小計 |
| B75:未確認の費用 | 1件 | まだ質問への回答が必要 |
| B76:比較額 | 未確認 | 総額として並べる条件がそろっていない |
356万円とB社408万円だけを読むと、差は52万円に見えます。しかしA社の移行費が40万円と分かれば、比較できる差は12万円です。小計の差と、条件がそろった後の差を混ぜないための表示です。「移行は基本費用に含む」と確認できた場合だけ0を入力し、回答と見積書の版を残します。
比較期間も同じにします。見本のB60を12から36へ変えると、条件と月額が一定ならA社468万円、B社504万円で差は36万円です。長く使うほど月額差は積み上がりますが、障害対応の質が金額差に比例するとは限りません。期間・含む費用・支援内容を一緒に読みます。
依頼先を決める前に確かめること
予算内と分かったら、必須機能、納期、社内作業、公開後の支援が自社の条件に合うかを見ます。価格を優先できるのは、必要な条件を満たすと分かった範囲です。対応時間や担当者の継続性を重視するなら、実際の担当予定者と引継ぎ方法まで確認します。
納品物は「システム一式」で済ませず、ソースコード、仕様書、テスト結果、操作手順書などを具体的に記します。受入れは、発注者が完成内容を点検することです。この例では納品後10営業日で、登録・検索・担当変更・権限・CSV出力・移行件数を確認し、満たさない箇所は修正後に再確認します。この日数は想定例で、各案件の規模や担当者の予定に応じて合意します。
途中で機能や数量を変える場合は、費用と納期への影響を見積り、着手前に書面で合意します。支払時期、保守で扱う不具合と追加要望の分け方、終了時のデータ返却も比較表に残してください。契約前の確認を広げたい場合は、初めてのシステム開発依頼で聞く7つの質問を参照できます。
よくある質問
相見積りは何社に頼めばよいか
必要な社数は、案件の専門性、候補の違い、比較に使える時間によって変わります。2社でも条件や提案の差は分かりますが、必要な技術を持つ候補が限られる場合もあります。社数だけを目標にせず、同じ条件で質問し、回答を比較できる範囲で選びます。
仕様が固まっていなくても見積りを頼めるか
相談はできます。ただし、金額を出せる段階や、先に必要な調査は開発会社と案件によって異なります。概算のための仮定、調査の費用、次に金額を見直す時点を聞いておきます。
見積書の有効期限も見るべきか
見ます。期限を過ぎると、担当者の予定や外部サービスの料金などを見直す場合があります。有効期限と再見積りの条件を各社に聞き、発注時期が延びたら同じ条件で見積りを取り直します。
比較した条件を次の相談へ持っていく
まず手元の見積書から、含まれるか分からない作業を一つ選び、各社へ同じ質問を送ってください。比較表を埋めたら、残った未確認項目と優先する条件を見直します。必要な作業が入っているか、社内で担う仕事は実行できるか、差額に見合う違いがあるか。この順に確認すると、次に聞くことが具体的になります。
依頼の範囲や条件を整理したい場合は、今の業務や手元のメモからご相談いただけます。開発全体の対応内容は、オーダーメイドの業務システム開発にまとめています。
同じ条件の見積りがそろったら、実担当者や保守・引き継ぎについて聞く質問も使えます(開発会社と個人への依頼を比べる12の質問)。
参考出典
- IPA「情報システム・モデル取引・契約書 第二版」受託開発・保守運用。本文2025年4月8日更新、案内ページ2026年9月11日更新
- IPA「CoBRA法に基づく見積り支援ツール」2017年7月20日更新のアーカイブ
確認日:2026年9月15日。モデル契約書は、ソフトウェア開発委託基本モデル契約書の第4・8・27・28・37条と解説を参照しました。全案件に適用される法的義務や推奨価格の根拠ではありません。CoBRA法の資料は工数変動の考え方に限って参照し、現在の費用相場や削減効果の根拠には使っていません。


