開発会社と個人への依頼は、会社の規模より、実際の担当者、似た制約の経験、確かめ方、契約と継続対応の裏付けで比べます。会社でも一人が開発を担う場合があり、個人でも協力者と分担できるためです。
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主担当が休んだら、誰が直してくれる?開発会社とフリーランスに聞く12の質問
会社の規模に加え、実際の担当者、似た制約への対応、保守と引き継ぎを比べます。同じ条件への回答例を読むと、面談で追加で聞く点が見えてきます。12の質問を記入できるExcelの見本・空欄版付き。
影山 湧亮 / NeoLogic株式会社 代表取締役。元警視庁。現場業務の整理と生成AI活用・Webシステム開発を一貫して担当。

たとえば、業務システムの見積りを取り、開発会社と個人のフリーランスが候補に残ったとします。会社には実績一覧があり、個人とは直接話せる。それでも「実際に作るのは誰か」「その人が休んだらどうなるか」が分からなければ、安心して任せられる範囲を判断できません。
以下では、同じ条件への回答例を並べて、面談で追加して聞く点を探します。
例えば「主担当が休んだ日は、誰が調べてくれますか」と質問します。法人Aと個人Bの回答を比べてみます(想定例)。
発注者:「主担当が不在のときは、どうなりますか」
法人A:「共通の窓口があります」
個人B:「平日は協力者Sが対応する提案です。事前の契約が必要です」
Aには「窓口から誰へ連絡し、その人は調査・修正できるのか」、Bには「協力者との契約はいつ確定し、どの時間帯に何を頼めるのか」を聞きます。受付があることと、技術対応ができることは別です。会社・個人の区別だけでは、どちらもまだ判断できません。
比較例の共通条件は、利用者20人・過去データ3万件・会計CSV連携・平日日中の利用・将来の他社保守です。「証拠あり」は提示資料で確認できた範囲、「条件付き」は前提条件が残る回答、「追加確認」は情報が足りない回答として読みます。
実際に担当する人と、不在時の対応
契約相手と、実際に働くチームは分けて見ます。会社の人数に加え、今回の営業窓口、作る人、レビューする人、保守窓口を書き出してください。レビューとは、設計やコード、動作確認の内容を点検することです。役割の兼任自体を問題とせず、誰が何を点検し、どこから別の支援が必要かを聞きます。
回答の比較(質問1〜3)
| 質問 | 法人Aの回答と分類 | 個人Bの回答と分類 | 追加で確かめる点 |
|---|---|---|---|
| 1. 営業・開発・レビュー・保守は、それぞれ誰が担当しますか。 | 証拠あり:役割表に開発A1、レビューA2、保守窓口を記載。 | 証拠あり:本人が開発・窓口。外部レビューRの役割も書面化。 | 兼任と外部協力の範囲を契約へ。 |
| 2. 担当者の稼働をいつ確定し、交代・再委託はどう知らせますか。 | 条件付き:担当確定は契約時。稼働は仮押さえ。 | 証拠あり:本件の作業枠と変更時の連絡手順を計画に記載。 | 配置の確定と稼働計画の実行を区別。 |
| 3. 主担当が不在のとき、誰が何時に、どこまで対応できますか。 | 追加確認:共通窓口あり。不在時の技術担当は不明。 | 条件付き:協力者Sの平日対応を提案。事前契約が必要。 | 受付だけでなく、調査・修正できる人へ。 |
「協力者がいます」という回答には、協力者の仕事、参加が確定する時期、扱える情報と権限を追加で聞きます。レビューと障害時の代替対応は、それぞれ引き受ける範囲を聞きます。個別に契約するのか、依頼先が取りまとめるのかも合わせます。
IPAの「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン」第4.0版は、役割・責任の文書化と、平時・有事の連絡体制の整備を示しています。役割表と連絡手順を確かめる際の参考になります(出典:IPA同ガイドライン、本文26ページ(PDF))。
自社と似た制約に対応した経験
CSVは、会計システムと受け渡す表形式のデータです。同じ業種の実績でも、データの形式や例外処理、同時に使う人数が違えば、今回の課題に対応できるかは別に調べる必要があります。似ている点と、まだ調べないと分からない点を分けて聞きます。
回答の比較(質問4〜6)
| 質問 | 法人Aの回答と分類 | 個人Bの回答と分類 | 追加で確かめる点 |
|---|---|---|---|
| 4. 紹介した実績は誰の受注で、今回の担当者は何を担いましたか。 | 追加確認:会社の同業実績あり。今回の担当者の関与は不明。 | 証拠あり:開示許諾済みの担当表等で、前職の移行担当を確認。 | 会社の実績と前職の個人経験を分ける。 |
| 5. データ・連携・利用規模のどの条件が、今回と似ていますか。 | 条件付き:近い利用人数の経験あり。CSVの差異は調査後。 | 条件付き:CSV経験あり。3万件の品質はサンプル確認後。 | 今回と異なる条件を調査対象へ。 |
| 6. 難しかった条件に、どう対処し、結果をどう確認しましたか。 | 証拠あり:重複取込みへの対処手順と匿名の確認記録あり。 | 追加確認:正常時デモのみ。失敗時の検証記録は不明。 | 成功画面に加え、失敗時の確認方法を聞く。 |
会社の受注実績、今回の担当者が担った工程、個人の前職経験は別欄にします。前職で移行を担当した経験は判断材料ですが、現在の事業者が開発全体や保守まで受注した実績として扱いません。役割が分かると、今回も同じ工程を担当するのかを聞けます。
守秘義務のある顧客名、ソースコード、契約書原本の開示を求める必要はありません。公開・開示の許諾がある範囲の匿名資料や、ダミーデータでの手順説明を相談してください。裏付けがない部分は「不明」と残します。公開実績が少ないことだけを理由に能力不足とせず、確かめる方法を一緒に決めます。
動くものを見る時期と、発注側の準備
実績を聞いた後は、今回の要望をどう整理し、どの段階で動くものを見られるかを聞きます。発注側が業務の例外を整理する提案と、依頼先が聞き取りから支援する提案では、同じ金額でも含まれる仕事が違います。
回答の比較(質問7〜9)
| 質問 | 法人Aの回答と分類 | 個人Bの回答と分類 | 追加で確かめる点 |
|---|---|---|---|
| 7. 要件の整理と発注側の判断は、誰がいつ行い、どこへ残しますか。 | 証拠あり:双方の担当・承認日・未決事項の管理先を記載。 | 条件付き:発注側の例外一覧が必要。社内の準備担当は未定。 | 発注側の資料・承認担当も決める。 |
| 8. 見積りに含む範囲・別費用と、変更時の承認方法は何ですか。 | 証拠あり:見積り案に対象外と、追加着手前の承認を明記。 | 追加確認:変更は相談可能。追加費用の決め方は不明。 | 変更の合意前に追加作業を始めない取決めへ。 |
| 9. 何をもって完成とし、誰がどの操作・例外を確認しますか。 | 証拠あり:受入計画に取消し・権限違反と確認担当を記載。 | 追加確認:通常登録のデモのみ。例外の受入条件は不明。 | 正常・例外の受入条件と修正条件を合わせる。 |
先ほどの想定例なら、通常の登録だけでなく、取消し後の会計CSV、同じデータの再取込み、権限のない人の操作まで、試す場面を決めます。デモが動くことと、合意した受入条件を満たすことは分けて扱います。「修正します」という回答には、何を不具合とし、どこまで・いつまで修正する条件なのかも聞いてください。
契約上の完成・報酬・終了の条件は、システム開発の請負・準委任|契約前の確認項目で整理できます。
価格は開発費だけでなく、テスト、移行、保守、外部サービス利用料と、発注側に残る作業をそろえて比べます。見積りを依頼する前提の整理は、システム開発の相見積り|条件をそろえる比較表で説明しています。
障害対応と、契約終了後の引き継ぎ
「保守あり」だけでは、連絡を受けるのか、調査に着手するのか、復旧まで約束するのかが分かりません。受付時間、初動の目標、復旧の目標・保証の有無、対象外と費用を分けて聞きます。主担当が不在でも同じ条件で動けるかは、質問3と合わせて聞きます。
回答の比較(質問10〜12)
| 質問 | 法人Aの回答と分類 | 個人Bの回答と分類 | 追加で確かめる点 |
|---|---|---|---|
| 10. 公開後の保守範囲と、受付・初動・復旧の条件は何ですか。 | 条件付き:平日日中の保守は別契約。夜間・休日は対象外。 | 証拠あり:条件案に4営業時間以内の初動目標と料金を記載。 | 初動目標は復旧保証ではない。 |
| 11. ソース・データ・管理権限は誰が管理し、復元をどう確かめますか。 | 追加確認:自動バックアップの説明のみ。復元記録は不明。 | 証拠あり:台帳案と、説明用環境での復元確認記録あり。 | バックアップの存在と復元確認を分ける。 |
| 12. 終了時に何を、どの形式・期限・費用・利用条件で引き渡しますか。 | 条件付き:独自部品は対象外。他社保守の利用条件は協議中。 | 証拠あり:成果物案にソース・データ・手順と他社保守条件を記載。 | 他社保守に必要な条件を終了前でなく契約前へ。 |
バックアップは、対象・頻度・保管先と戻す手順を聞きます。事業継続の要件に合わせた復旧準備と訓練を合わせて確かめます。今回の環境での復元確認を誰が担うか、提案へ書いてもらいます(出典:IPA同ガイドライン、本文33・38ページ(PDF))。
終了時の成果物は、プログラムの元データであるソースコード、データの形式、構成・運用手順、管理権限の移管、除外する部品まで並べます。「ソースを渡す」という回答だけで、別の事業者による利用・改変・保守も可能と判断しないでください。契約案と利用条件を読み合わせ、判断が難しい条項は専門家に相談します。
また、移管先で使えることの試験と、旧担当者のアクセス権の失効を別々に決めます。契約終了時には、機密情報・アクセス権の回収や廃棄も決めます(出典:IPA同ガイドライン、本文39ページ(PDF))。
例えば「製品本体は引き渡さず、データだけ返す」という提案は、データを別サービスへ移せればよい案件では検討できます。一方、他社がソースを修正して保守できることが必須なら、その条件のままでは満たせません。契約終了時に何を残したいかが変われば、同じ提案でも判断が変わります。
厳格な停止時間や業種固有の規制が関わる場合は、必要な条件を自社の業務責任者・法務等に、実装や復旧の方法を候補先の技術・保守担当に聞きます。実際の引き継ぎ準備は、他社開発システムの保守引き継ぎで調べることへ進んでください。
回答がそろったら、残る条件を聞く
次の面談には、見本と空欄票を収録した比較用の記入票をダウンロードして使えます。
「証拠あり・条件付き・追加確認」の付け方
回答を「証拠あり・条件付き・追加確認」に分けます。証拠ありは、対象や版が分かる資料・記録で、その回答が裏付けられた状態です。提案書では提案内容、過去の対応資料では実行実績を見ます。見た資料と分かる範囲をセットで残してください。
条件付きは、別契約や事前調査など、成り立つ条件が明示されている回答です。条件が未確定なら、資料があってもこの分類にします。追加確認は、一般的な説明だけ、回答がない、裏付けと食い違うなど、まだ判断できない状態です。未確定の条件や不足する情報を、次の質問へつなげるための分類です。
表の「4営業時間」は初動の目標で、復旧までの時間を示していません。復元についても、提案時の説明用環境と今回の環境の違いを確かめます。詳しい想定資料・版・条件外は、記入票に載せています。
選ぶときは、必須条件が満たせるかを先に見ます。証拠ありの件数で順位を付けても、必要な条件の不足は分かりません。この例で他社保守が必須なら、Aの質問12は契約前に解消が必要です。Bも、協力者との契約や受入条件が未確定なまま、継続対応が整っているとは判断できません。
次の面談では、特に不在時の窓口について「誰が受けるか、誰が調べるか、いつ動けるか、必要な権限があるか」を聞きます。記入票の空欄版を候補ごとに複製し、回答、資料の版、記入日、根拠の所在、条件外、次の質問と担当・期限を残してください。分からない項目は「不明」と記録します。
手作業で代替できる補助業務と、停止中も注文を受け続けたい業務では、許容できる体制が違います。満たせない必須条件が残るなら、会社・個人の肩書にかかわらず、範囲の縮小、支援の追加、別候補の検討へ戻ります。依頼先を選んだら、任せる範囲と、自社や別の支援先で補う範囲を書面で合わせます。
今回の仕事で外せない条件を、一つ選んで面談する
たとえば冒頭の案件で「将来の他社保守」が必須なら、質問12の回答を先に読みます。Aの独自部品を引き渡せなくても、その部品の利用を継続できるか、取り替えられるかで判断は変わります。Bも、ソースの受渡しが書かれているだけでは足りず、実際の管理者と使える手順を確認します。
面談では「今回のデータをダミーに置き換えた1件を、別の担当者が取り出し、戻し、修正できるところまで見せてもらえますか」と聞けます。まだ作る前なら、過去の許諾済み見本で説明してもらい、今回の完成条件へ写します。一般的な実績の多さと、本件で必要な条件への回答を分けて比べるための質問です。
新規開発より、動いているシステムの引き継ぎ先を探している場合は、保守会社を比較するときの質問へ進めます。
相談前の整理と、次に読む記事
相談する業務がまだ曖昧なら、システム化の相談前に使える業務棚卸し表から整理できます。費用や変更、解約など全体の不安を整理したい場合は、初めてのシステム開発依頼で聞く7つの質問も参照してください。
相談には、対象業務、必要な連携、保守・引き継ぎで譲れない条件を持ち寄ります。
依頼先との打ち合わせでは、進捗率を使える機能と残作業で確かめる見方も役立ちます(開発の進み具合が見えないときに確かめること)。
参考出典
- IPA「情報システム・モデル取引・契約書(第二版)」2020年12月22日公開、本文2025年4月8日更新。概要・見直しのポイント・利用時の注意事項
- IPA「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン」第4.0版、2026年3月27日公開、6月1日表記修正・7月3日ロゴ更新。本文26・29・33・37〜39ページ(PDF)
- IPA 同ガイドラインの公開・更新情報
資料確認日:2026年9月15日。12の質問と回答分類は、公開資料の原則を参考にした本記事の整理です。モデル契約の個別条文の適用や権利の帰属は、契約本文と現行法を確認してください。情報セキュリティのガイドラインは個人事業主を含む中小企業向けで、工場設備・制御システムは対象外です。


