不適合の報告を「対策済み」で終わらせないには、当面の修正、原因への是正処置、その有効性の確認を分けて記録します。対策を実施した日と、効果を確かめて案件を閉じた日は別です。
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通知は届いていたのに、旧版ラベルが出荷された。不適合を「対策済み」で終わらせない
旧版のラベルを出荷した例から、製品の修正と原因への対策を追います。担当と期限を決め、効果を確かめてから閉じる条件を整理。問題が再び起きた場合も記録できる、見本・空欄付きExcelを使えます。
影山 湧亮 / NeoLogic株式会社 代表取締役。元警視庁。現場業務の整理と生成AI活用・Webシステム開発を一貫して担当。

たとえば「ラベルは貼り替えました。対策済みです」。報告書にそう書かれていても、次の出荷で旧版を選べる状態が残っていれば、原因への対応は続きます。
旧版ラベルを出荷したとき、「改訂の連絡が届いていなかったのでは」と疑うことがあります。この例では、通知の受領記録が見つかりました(想定例)。調べるべきだったのは、連絡の回数よりも、通知後も旧版を選べた印刷経路でした。
原因が分からない段階では、仮説と確かめ方を残します。以下では、旧版ラベルを出荷した一件を社内の品質改善記録として追います。
要求と観測事実を記録する
「何に対して、何が違うか」を先にそろえる
不適合の記録は、照合できる要求と観測事実から始めます。日本規格協会ソリューションズの審査説明では、不適合の原因、修正、是正処置を含む文書・記録を扱っています。ここで使う項目や状態名は、社内記録を設計するための例です(出典:「不適合」の処置)。
2026年9月1日に部品20箱を出荷し、翌2日に5箱のラベルがRev02だったと分かりました。受注で指定された仕様書のラベルはRev03です。その受注に適用する版との違いを記録します。別の受注で旧版が指定されていれば、判断は変わります。
要求が分かる仕様書と受注記録をE01、5箱の写真をE02、出荷明細と処置の合意記録をE03として分けます。発見日時、製品、ロットや出荷IDも添え、写真だけでは分からない対象を補います。「慌てていたはず」は、調査で確かめる仮説へ移します。
判明した範囲と、まだ調べている範囲を分ける
発見時は「不適合が見つかった5箱」と「影響を調べる20箱」を区別します。本例では20箱を客先で保留し、照合の結果、残る15箱はRev03と分かりました。9月3日には印刷履歴E04から、改訂後に同じ経路を使った出荷がこの1件だけだったと確認した設定です。調査中の範囲は、確認が終わるまで調査中として残します。
応急処置と原因調査を分ける
貼替えと原因調査は、並行して進めます。まず影響拡大を抑え、必要な証拠を残しながら調べます。日本規格協会の公表資料で使われる原因・修正・是正処置の区別を参考に、当面の対応を次のように整理します。
| 記録する区分 | この架空例で行うこと | それだけでは分からないこと |
|---|---|---|
| 応急処置 | 客先で20箱を保留し、同じ経路の印刷を一時停止する | どの箱が要求を満たすか、なぜ誤ったか |
| 修正 | 合意した方法で5箱を回収・貼替えし、Rev03との一致を照合する | 次の出荷で同じ誤りを防げるか |
| 是正処置 | 特定した原因に対し、版の選択経路と照合手順を変える | 変更した運用が継続して機能するか |
9月3日に5箱の貼替えと再納品を終えても、案件の状態は「原因確認中」です。修正した人、実施日、対象数量、照合結果、客先との合意記録E03を残し、原因調査は別に追います。貼替え前の写真や使われた版も、調査のために保存します。
本例はラベル版の相違だけを扱い、製品本体の異常や安全表示の欠落はない設定です。実際には安全性、追跡性、顧客要求への影響によって、出荷停止や連絡・回収の判断が変わります。品質責任者が影響を調べ、対象と処置を決めてください。
原因と対策を対応付ける
仮説には、支持する証拠と反証の両方を書く
「作業者の注意不足」を結論にすると、選択画面や照合手順の問題を調べないまま終わるおそれがあります。原因欄には、仮説、調べ方、結果、採否を残します。
9月4日に確かめたのは、次の三つです。
| 原因の仮説 | 確かめた事実 | 採否と対策の方向 |
|---|---|---|
| 改訂通知が届かなかった | 受領記録と聞き取りで、届いていたと判明 | この仮説は採用しない |
| 通常の印刷経路で旧版を選べた | 選択候補と実際の印刷履歴が一致 | 選択経路を変更する |
| 出荷前に版違いを見逃した | チェック票には数量欄しかなく、採用版との照合欄がなかった | 版と確認者を残す手順へ改訂する |
記入例には、通知の受領記録、選択画面、印刷履歴、旧チェック票をそれぞれ参照できる番号を付けています。
選択を誤る原因と、誤りを見逃す原因は別に扱います。証拠が足りなければ「原因未確定」とし、次に調べる記録、担当、期限を設定します。後から異なる証拠が出た場合も、当初の仮説を残して判断を更新します。
対策は、原因・担当・期限・実施証拠の組にする
文書管理担当は9月7日までに、現場用フォルダーからRev02を外し、管理者限定の保管領域へ移します。本例ではRev02を必要とする有効な受注はない設定です。旧版の再発行が必要な業務では、採用版を確かめる承認経路を別に設けます。
出荷責任者は同じ期限までに、チェック票をCP-L17 Rev02へ改訂し、受注の採用版、現物の版、照合者を記入する欄を設けます。権限変更の記録E07と、改訂票・操作説明の記録E08を各対策に結び付けます。
教育は、変更した手順を使えるようにする対策の一部です。教育だけで閉じる案には、手順や選択経路に問題がなく、知識・技能の不足が証拠で示され、教育後の実作業も確認できることが必要です。本例には旧版を選べる構造があるため、選択経路と照合手順も変えます。
効果確認の条件を先に決める
対象と判定方法を決める
対策が狙いどおり働いているかを、対象と判定条件を決めて確かめます。ISOの品質保証解説では、証拠に基づく監視・評価と継続改善を挙げ、方法は製品・サービス・活動に合わせて選ぶと説明しています(出典:「Best practices in quality assurance」「Quality assurance methods」)。
本例では対策実施前の9月4日に、品質確認者と品質責任者が条件を決めます。9月8〜14日に、対象の印刷経路を使う10出荷・計50箱を点検します。内訳は通常印刷8出荷、再発行2出荷で、3名の作業者を含めます。3名が通常印刷・再発行を行う計6操作では、旧版を選べないことも確かめます。
判定条件は、旧版を選べないこと、10出荷すべてに新チェック票の版照合と確認者が記録されていること、対象50箱が受注の採用版と一致することです。変更した経路と帳票が実際に使われた証拠も確認します。予定の出荷がなければ「効果確認待ち」を続け、次の確認日を決めます。
記入シートで要求・原因・対策・結果を照合する
表1 不適合の報告から原因・是正・再確認まで追う記入例(想定例) 空欄版と詳しい記入例は、不適合・是正・再確認の記入シート(Excel)に収録しています。
| 項目 | 記入例(日付は2026年) |
|---|---|
| 不適合ID | NC-2026-001 |
| 要求事項 | 受注SH-0901-01はSP-L17 Rev03を採用。20箱。 |
| 観測事実 | 9/2、20箱中5箱がRev02。要求版との差を写真E02で確認。 |
| 影響範囲 | 不適合5箱、残り15箱はRev03。同経路の改訂後出荷はこの1件。 |
| 応急処置・修正 | 20箱保留・印刷停止。9/3に5箱貼替え・再納品。修正済みでも未完了。 |
| 原因仮説→確認 | 通知未達は支持されず。9/4、旧版を選べる経路と版照合欄の欠落を確認。 |
| 是正担当・内容 | 文書管理担当:旧版経路制限。出荷責任者:新票に照合欄。新票はCP-L17 Rev02。 |
| 実施日 | 9/7(期限9/7)に実施。E07・E08を残し、「効果確認待ち」へ。 |
| 確認条件 | 9/8〜14の10出荷・50箱。新票の使用と採用版一致。3名・2経路の6操作で旧版を選べないこと。 |
| 確認結果 | 9/14に全条件を達成。9/15、品質責任者が完了承認。未達なら再検討へ、完了後の再発・新証拠は再開。 |
実施済み、確認待ち、完了、再開を区別する
| 時点 | 終わったこと | 案件全体の状態 |
|---|---|---|
| 9/3 | 5箱の貼替えと再納品 | 原因確認中 |
| 9/7 | 旧版の選択経路とチェック票を変更 | 効果確認待ち |
| 9/14〜15 | 6操作・10出荷50箱を点検し、品質責任者が翌15日に承認 | 案件を完了 |
14日の結果はE09・E10、15日の承認はE11へ記録します。修正・対策・点検結果がそろったことを品質責任者が照合して、案件を閉じます。
点検結果には、対象、期間、件数、使った経路、満たした条件と限界を添えます。ここで用いた期間・件数は本例の点検計画で、実案件の条件は影響度と発生機会に応じて決めます。合否条件を変更する場合は、理由と承認を残します。
対策が未実施なら「対策未実施」、実施したが機会や証拠が足りなければ「効果確認待ち」です。条件を満たさなければ、不足点を記録して「再検討中」へ戻します。完了後の再発や新しい証拠では「再開」とし、以前の完了承認を残したまま、新たな事実を同じID、または関連付けた別IDで追います。影響拡大の懸念があれば、応急処置も見直します。
図1 各段階の担当と確定条件、閉じる条件と戻る条件を分けた判断の流れ(架空の設計例)。
記録を次の改善へ使う
一覧では「応急処置・修正の状況」と「案件全体の状態」を別の欄にします。修正が終わった案件の中にも、対策未実施や効果確認待ちが残るからです。不適合ID、影響度、担当、次の作業、期限、原因分類、関連IDを並べれば、今対応する案件と過去の類似案件を探し分けられます。
検索用の分類は「ラベル」「選択経路」「版照合なし」など、現象と原因を分けます。原因未確定の段階では調査状況も添えます。証拠の保存先や閲覧権限、記録を更新できる人も決め、担当交代後に根拠へ戻れるようにします。
軽微な事象には、影響に応じた記録を選びます。顧客への影響、再発、影響範囲の不明確さがある場合は、記録を厚くします。軽微で影響を限定でき、修正だけで閉じると判断した場合も、要求と事実、処置、是正処置の要否を検討した理由、確認者は残します。不適合の原因が設備の故障や劣化にあった場合は、設備台帳の点検・修理履歴とも結び付けます(設備の点検・修理履歴を一つにする方法)。
設備の点検・修理履歴や図面改訂の配布記録は、必要に応じてIDでつなぎます。不適合票には「何を満たさず、なぜ起き、何を変え、どう確かめたか」を残します。
記入シートには、案件の詳しい記録と要約、空欄版、項目説明、経過履歴、案件一覧があります。案件ごとに空欄版を複製し、担当・期限・証拠の保存先・点検条件を記入してください。「案件一覧」の基準日は手動で更新します。6行目は記入例と連動し、7〜25行目は追加記入用です。案件の完了は品質責任者が記録を照合して判断します。
少件数で担当や根拠を追える間は、まず対応表を整える方法があります。既製の品質管理製品で自社の手順を扱える場合は、その標準機能を比べます。検査記録との連携、部門ごとの確認権限、期限・再確認の追跡が既存ツールで足りない場合は、不足する範囲をシステム開発で補う方法も選べます。
まず、対策済みの不適合票を1件開き、効果を確かめた記録までたどれるか見てください。相談時には、その票と完了条件・担当が分かる資料を用意します。専門監修や認証審査は別の相談範囲として確認します。
製造条件の変更が関わる問題なら、生産区間と検査結果から使った条件の版をたどれます(射出成形の条件変更を生産・検査記録へつなぐ方法)。




