本文へスキップ
NeoLogic
NeoLogic

棚には4個、画面には「−1個」。在庫が合わないときに調べる順番

同じ品目・場所・単位・時刻で数字をそろえ、いつ違いが生まれたかを追います。7取引の記入例で、後日の入力、返品の検品待ち、重複した出庫を点検。原因を調べてから差異を調整する流れが分かります。

棚の4個と記録の−1個を比べ、取引履歴を調べる図。

在庫が合わない原因は、入力の遅れ、同じ出荷の二重入力、移動や返品の扱いの違いなどです。数字を上書きする前に、その欄が何を数えているかを確かめ、品目・場所・単位・時刻をそろえて取引を一件ずつたどります。

たとえば、棚卸しで現物は4個あるのに、画面には「−1個」。数字を4へ上書きする前に、その在庫欄が何を数えているかを確かめてください。現物数量の差なのか、受注へ割り当てた結果の不足なのかで、調べる記録が変わります。

7件の取引をたどり、翌日入力と二重入力が重なった差異を解く例を見ていきます。

商品・保管場所・単位をそろえる

在庫の数は「何月何日何時の数か」を決めてから比べます。帳簿の数、数えた現物、入力を確かめた時点の一つでもずれると、同じ現物でも差が変わるためです。最初に、品目ID、倉庫・棚、数量単位、数えた時刻を調査表へ固定します。商品名が同じでも別品番を混ぜず、A倉庫の台帳を店頭やB倉庫の現物と比べないようにします。1ケース10個という設定なら2ケースは20個ですが、換算率が分からなければ推測で合算しません。荷主やロットで区別している在庫は、その区分も一致させます。

数える間の入出庫を止められない場合は、計数時刻と前後の移動を記録し、同じ時刻の数量へ戻して比較します。開始残自体が確かでなければ、直近の承認済み棚卸記録までさかのぼります。開始残の誤りを、当日の出荷の誤りと決めつけないためです。

マイナスになったのは、どの数量か

帳簿在庫は記録から計算した数、実数は現物を数えた数です。販売可能数は、そのうち新たな販売へ使える数を指します。Shopifyの在庫状態の説明では、On handをAvailable・Committed・Unavailableの合計とし、検品待ち等のUnavailableを販売可能数と分けています。自社製品では同じ名称・計算とは限らないため、画面の定義を確認します。

販売可能数だけがマイナスなら、引当や保留の過不足を先に調べます。現物が足りないと確定したわけではありません。またSmileWorksの「出庫予定数量」のマイナスは、受注と売上の数量関係を調べる対象です。この表示だけを理由に、現物在庫を増やす調整はしません。

入出庫の記録漏れを調べる

開始残に入庫を足し、出庫を引き、発生順に残数を再計算します。数量が一致していた直前から、出荷票、入荷票、返品受入票、移動票と台帳を一件ずつ対応させてください。現物は動いたのに伝票がないのか、伝票はあるのに入力されていないのかを分けます。原因の時期が不明なら、調査期間を広げます。

品目P-001をA倉庫で数える例です(想定例、単位:個)。開始残20個(2026年9月10日8:00)。9月11日18:00を数量の基準時刻、9月12日9:30を入力内容を見る時点とします。すべて日本時間です。

本例では9月11日18:00の実数を4個と置き、その後、9月12日9:30まで現物の動きはないものとします。理論残は台帳上の入出庫数の累計であり、途中行の現物を数えた値でも、その当時の画面表示でもありません。未計数の実数欄は空欄にし、0とは扱いません。

7件の取引を発生順に並べる

表1 開始残20個からの入出庫。数量の基準時刻は9月11日18:00、入力を確かめた時点は9月12日9:30です。理論残は、後日入力を含む全7件を発生順に再計算した値です。

No. 発生日 入力日 伝票ID 入出庫数 理論残 実数 差異理由
1 2026-09-10 09:00 2026-09-10 09:05 IN-01 +10 30 仕入入庫。差異なし。
2 2026-09-10 11:00 2026-09-10 11:05 SH-02 -12 18 出荷。差異なし。
3 2026-09-10 15:00 2026-09-10 15:05 MV-03 -4 14 B倉庫へ移動。A側の出庫のみ。
4 2026-09-11 09:00 2026-09-12 09:00 SH-04 -8 6 出荷8個を翌日入力。発生時に未計上。
5 2026-09-11 11:00 2026-09-11 11:05 RT-05 +3 9 返品3個を検品待ちへ。販売可能数は増えない。
6 2026-09-11 14:00 2026-09-11 14:05 SH-06 -5 4 通常在庫から5個出荷。
7 2026-09-11 16:00 2026-09-11 16:05 SH-07 -5 -1 4※ SH-06と同じ出荷を重複計上。追加出荷なし。

※実数4個は2026年9月11日18:00の棚卸数という想定です。実数の空欄は未計数です。入出庫数は台帳に記録された増減を表します。

7件を再計算すると、20+10−12−4−8+3−5−5=−1個です。最後の実数4個との差は「実数−理論残」で+5個となります。ただし、差が5個だから5個を直せばよい、と判断するのはまだ早い段階です。次に、発生日と入力日の違いを調べます。

返品・倉庫間の移動・後から入力した記録を追う

発生日と入力日を、別々に見る

SH-04は9月11日に8個を出荷し、翌12日に入力した記録です。発生日だけで再計算すると、後から入力された記録も過去の残数に入ります。調査前に履歴の写しを保存し、「その時点で入力済みだった残数」と「後日入力を含めた再計算値」を分けて残してください。

同じ現物4個でも、入力の締め時点で差が変わる

照合する記録 理論残 実数 差異(実数−理論残)
9/11 18:00までの入力のみ 7個 4個 −3個
9/12 9:30までの入力を反映 −1個 4個 +5個

9月11日の差−3個は、出荷8個の未計上による過大計上と、5個の重複出庫による過少計上が相殺された値です。最初のずれはSH-04の出荷時点で生じ、画面の理論残が負になるのは翌日の入力後です。したがって、マイナスになった入力だけを原因と決めつけず、その前の記録まで追います。

戻った商品、移した商品、二度記録した商品を分ける

RT-05の返品3個はA倉庫にありますが、検品待ちです。本例では引当済みを0個とし、訂正後の現物4個のうち販売可能なのは1個です。訂正前の記録のままでは、理論残−1個から検品待ち3個を引くため、販売可能数は−4個と表示されます。返品を受け取った担当者と販売可能へ戻す判断者を分け、検品完了前は通常在庫へ混ぜない運用にします。飲食店では、注文の取消が調理の前か後かで、在庫から引く量が変わります(飲食店の注文取消・変更を厨房と在庫へ反映する方法)。

MV-03はAからBへの4個の移動です。A側の出庫とB側の受領を同じ移動番号で照合します。輸送中なら「移動中」として所在を追い、両倉庫の手元在庫へ同時に加えません。表1はAだけの台帳なのでBの入庫は載せていませんが、本例ではBの受領控えもそろった設定です。

最後の出庫記録の発生日は、誤伝票に登録された時刻です。伝票番号は違っていても、一つ前の出庫と同じ受注・配送控えに対応します。本例は出荷が一度しかないため、重複出庫と判断します。伝票番号が違うだけで別出荷とせず、分納なら合計数量と実際の出荷回数を照らし合わせます。SmileWorksも受注・売上の数量と、同じ受注からの複数コピーを確認する方法を示しています。

差異調整の理由を残す

原因が特定できたら、まず元伝票の訂正や取消で直せるかを見ます。本例ではSH-07の重複5個だけを、履歴が追える訂正で打ち消します。正しい出荷SH-04は取り消しません。訂正方法は自社の権限・締め処理・製品仕様に合わせ、元伝票を無断で書き換えないようにします。

重複した出庫を取り消す記録

残す項目 本例の記入内容
調整ID・処理日時 ADJ-01/2026-09-12 10:00
対象・元伝票 P-001/A倉庫/個/SH-07(参照SH-06)
調整前→増減→調整後 −1個 → +5個 → 4個
理由・根拠 重複出庫。SO-06・D-06・CP-07を照合し、追加出荷なし
申請者・確認者 倉庫担当A/事務担当B
保留事項・次回の照合 返品3個は検品待ちを維持。販売可否は未確定。9/30に再照合

これで数量は一致しますが、返品の販売可否まで確定したわけではありません。Shopifyの在庫数量調整では、調整理由をデスクトップで選択でき、検品等の販売不可状態も扱えます。ただしAdd reasonはモバイルアプリでは利用できない旨が記載されています。理由・証憑・確認者をどこへ残すかは、利用画面と自社運用に合わせて決めます。

原因不明のまま数量を合わせる必要がある場合は、再計数と必要な承認を経て、「原因不明・調査継続」と記録します。調整で残高を合わせることと、原因調査を完了することは別です。本稿は数量と記録の整合を扱い、会計上の在庫評価額や仕訳の修正は判断しません。

数字を上書きせず、一つの移動を取り消してみる

履歴を残す訂正を試したい場合は、品目・数量の在庫の操作例で「六角ナット M6 ステンレス」を使えます。初期値は倉庫1が5個、倉庫2が4個です。数量を4個にし、移動元を倉庫1、移動先を倉庫2のまま、メモに「棚の整理」と入れて移動を記録すると、1個と8個になります。

続けて「履歴で見る」を開き、新しく増えたM14だけを取り消します。2026年11月1日の画面確認では、取消理由を入力して取り消すと、両倉庫は5個と4個へ戻りました。履歴のM14は消えず「取消済み」となり、経過の件数が1件から2件へ増えています。

この操作を自社の訂正手順へ写す際は、現物が動いたかで分けます。

実際の状況 選ぶ処理の考え方
移動前に入力したが、現物は動かさなかった 対象の記録を取り消し、元の場所の数量へ戻す
現物は移した。その後、元の場所へ返す 過去の移動をなかったことにせず、返した移動を別に記録する
動かしたか分からない 両方の場所と受渡しを照合し、先に取消や増減を確定しない

公開デモで確かめたのは一件の移動と取消です。本文のSH-07の重複出庫や、現物の所在を確かめた結果ではありません。自社では、元伝票と現物の動きを結んでから、取り消す記録を一件に絞ってください。

次回の棚卸しまでの運用を決める

今回の差を直したら、原因ごとに「誰が、いつ、何と照合するか」を一つずつ決めます。本例なら、倉庫担当が出荷時に記録を残し、事務担当が日次締め前に配送控えと照合します。入力が翌日にずれたものは未入力一覧で引き継ぎます。重複は元受注・出荷番号で照合し、返品は検品担当の判断まで販売不可の区分に置きます。ECと店舗で同じ在庫を売っている場合は、売り越しと返品の扱いも決めます(ECと店舗の在庫をそろえる方法)。

次回棚卸しの9月30日には、P-001の実数と理論残に加え、出荷の未入力、同じ出荷の重複、移動先の未受領、返品の未検品が残っていないかを見ます。数量が一致したことだけを完了条件にせず、未解決事項には担当と期限を付けて引き継ぎます。

配布するXLSXの「7取引_空欄」は、品目・場所・単位ごとにシートを分け、開始残と時刻を入力してから使います。青字が入力欄、淡い緑の列が計算欄です。実数は計数時点だけを入力し、差異欄は「実数−理論残」で計算します。確認チェックと調整記録の空欄版もあり、配布用PDFは照合の打ち合わせや引継ぎに使えます。

既製品で足りる条件と、追加開発を考える条件

品目・場所・単位、返品の状態、履歴、承認権限を既製品の設定で扱えるなら、まず入力手順と日次照合を整える方法があります。既製品にない荷主別の区分や、複数システムにまたがる出荷番号の照合が必要な場合は、不足する部分を整理してから連携・追加開発を比較します。

記入例と空欄の管理表(Excel)と、確認チェック表(PDF)を使えます。

表示されている差から、調べる記録を選ぶ

  • 帳簿と現物が合わない: 品目・場所・単位・時刻をそろえ、最後に一致していたところから入出庫をたどる。出荷した日と入力した日も分けます。
  • 販売可能数だけが合わない: 引当、返品の検品待ち、移動中の扱いを調べる。販売可能数の表示だけを理由に、現物を増やす調整はしません。
  • 重複した記録が見つかった: 元の出荷・受領の控えと照合し、二度動いたのか、記録だけが二重なのかを確かめる。原因と元伝票を残して訂正します。
  • 原因を特定できない: 差を埋める前に、調査した範囲と未確認の伝票を残す。必要なら調査期間を広げ、次に確かめる担当を決めます。

調査表は、まず差が出た品目一つから記入してください。

台帳の設計から見直すなら、在庫管理を作る前に|残数と注文に使える数の違いへ。今回の原因追跡表と、既存製品で扱えなかった条件をそろえると、在庫管理の開発や荷主別の倉庫管理の相談でも、必要な変更を具体的に伝えられます。

参考出典

あわせて読む