たとえば、設計は図面をv2にしたのに、外注先にはv1の注文書が残っている。生産管理は「どの製番から変えるか」が分からず、完成品まで差し替えるべきか迷う。ここで必要なのは、最新版の置き場所に加え、変更を適用する対象と、変更前の部材を使える条件を決めることです。
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図面はv2、外注先の注文書はv1のまま。図面の改訂を部品表と手配に反映する方法
図面が改訂されたとき、どの製番の部品表や手配を変えるかを追います。顧客の承認、加工中品、旧版の継続を記録し、変更の通知から実施まで確かめる例。Excel管理表と配布PDFを使えます。
影山 湧亮 / NeoLogic株式会社 代表取締役。元警視庁。現場業務の整理と生成AI活用・Webシステム開発を一貫して担当。

装置3台を、未着手・加工中・完成済みの順に見ていきます(想定例)。9月2日にv1で手配した後、9月8日に取付板の穴位置の変更が発生しました。9月9日に新版を社内承認しています。日付はすべて2026年、結果は9月15日時点です。現物の再加工や使用可否は、設計・品質担当が判断します。
同じ取付板の変更でも、3台に同じ指示は出せません。
| 現物がある段階 | この例の判断 | 次に動く担当 |
|---|---|---|
| まだ加工を始めていない | 顧客承認後、新仕様へ切替 | 購買が旧指示を止め、新しい注文書を出す |
| すでに加工中 | 顧客承認と再加工可否が未確定なので停止・保留 | 設計・品質が現物を判断し、営業が顧客承認を取る |
| 装置が完成している | 安全上の是正を伴わず、顧客要求を満たすと判断・承認したため旧版を継続 | 生産管理が対象製番の非適用を表示 |
図面版と部品表版を結び付ける
BOMは、製品を構成する部品と必要数量を並べた部品表です。本例では、装置図D-AX-01のv1に部品表B-AX-01のb1、v2にb2を対応させます。版記号を同じにする必要はありません。対応表に図面番号・図面版・BOM番号・BOM版・承認記録を残し、設計担当が組み合わせを確定します。
表1は両版の全構成です。変更するのはP-101の部品図だけで、数量は変わりません。同じ部品IDでも部品図版が違うため、P-101という番号だけで現物を照合しない運用にします。本例は単層BOMであり、実務で子部品を変更する場合は、使用先の親構成も調べる対象に加えます。
表1 装置AX-01のBOM二版比較(想定例。数量は装置1台当たり)
| 部品ID・名称 | v1/b1 | v2/b2 | 変更内容 |
|---|---|---|---|
| P-101 取付板 | D-P101 v1/1個 | D-P101 v2/1個 | 穴位置を変更 |
| P-102 センサー | 規格S-01/1個 | 規格S-01/1個 | 変更なし |
| P-103 ボルト | 規格B-01/4本 | 規格B-01/4本 | 変更なし |
旧版を残して新版の構成を追加します。Microsoftの公式資料でも、版ごとの関連文書・BOM・有効期間を扱う概念が示されています(出典:「Engineering versions and engineering product categories」)。
受注ごとの採用版を残す
生産管理は、各製番に図面版と部品表版の組合せ、適用日、判断の根拠を残します。文書番号・承認・案件ごとの採用版を整理する基本は、図面の版と改訂履歴の管理を参照できます。ここでは、手配済みの部品と現物の段階で処置を分けます。
未着手の装置は、顧客が9月10日に変更を承認しました。手配書を差し替え、9月11日にv2/b2へ切り替えています。加工中の装置は、顧客承認と再加工の判断を待っているため、新版の適用日は空欄です。9月7日に完成した装置は、旧版を継続する条件を別途確定しました。
| 製番 | 9月15日時点の採用版 | 新版適用日 | 判断 |
|---|---|---|---|
| M-101 | v2/b2 | 9月11日 | 切替完了 |
| M-102 | v1/b1の記録を保持 | 未確定 | 製造停止・保留 |
| M-103 | v1/b1 | 非適用 | 旧版継続処置完了 |
設計が技術判断、営業が顧客承認の記録、生産管理が製番への適用確定を担当します。顧客承認が必要かどうかと、実際に得たかどうかは別々に記録します。
図1 版の確定から現物・手配・製造実績へつなぐ管理例
手配済み部品への影響を見る
変更の影響は、「製番×発注明細×現物の状態」で分けます。表2は同じP-101を各1個扱う例です。9月8日の手配状態を残した上で、その後の判断を追記しています。状態が違う行を一つにまとめると、未着手品の切替完了を加工中品にも誤って当てはめかねません。
3製番の承認日・適用日・通知と実施の記録を照合する
表2 P-101の変更影響判定(想定例。変更EC-038、状態は9月8日、結果は9月15日時点)
| 製番 | 採用版・適用日 | 対象部品・手配状態・処置 | 承認・通知・結論 |
|---|---|---|---|
| M-101 | 図面v2/BOM b2。9/11新版へ切替 | P-101/1個。外注先A・未着手から新仕様へ切替 | 社内9/9・顧客9/10承認。9/10受領・9/11手配差替。切替完了 |
| M-102 | 図面v1/BOM b1の記録を保持・製造停止。9/1は旧版の当初適用日。新版は未確定 | P-101/1個。外注先A・加工中。保留/再加工可否未判定 | 新版社内9/9のみ。顧客承認・現物判定は未了。9/9受領・停止、変更実施は未了。保留 |
| M-103 | 図面v1/BOM b1。9/1は旧版の当初適用日 | P-101/1個(組付け済み)。自社・装置完成。旧版継続/製番限定 | 設計・品質・顧客が9/10旧版継続を承認。9/10受領・9/11非適用表示。旧版継続処置完了 |
購買は、未着手品なら外注先に旧指示の停止と新指示への切替を伝え、注文書の図面版も合わせます。加工中品は、現物の識別と保留場所を残した上で、設計・品質が再加工して使えるかを判断します。再加工可否が不明なM-102を、材料が残っているという理由だけで使用可にしません。
完成品のM-103は、安全上の是正を伴わない仕様変更であり、旧仕様で顧客要求を満たすと設計・品質が判断し、顧客も当該製番の旧版継続を承認した設定です。この条件がなければ同じ判断はできません。安全・適合上の懸念がある場合は、担当部門が出荷・使用の扱いを別途判断します。
対象外の在庫、外注先への支給品、分納済み数量、他の製番へ転用した部品も洗い出します。部分的に切り替える場合は、数量・ロット単位で行を分け、使用・再加工・返品等の扱いが未確定の数量を見えなくしないことが必要です。
通知を受け取ったことと、変更を実施したことを区別する
通知は変更番号・製番・発注明細・旧版と新版・数量・停止または切替の指示を一組にします。購買を経由して外注先へ渡す場合も、それぞれの受領を記録し、未回答には期限と督促担当を置きます。
受領には相手・日時を、実施には処置・実施日・記録・点検者を残します。M-101は外注先Aの受領後、9月11日にPO-101の図面版差し替えを購買が済ませました。一方、M-102は9月9日に受領と加工停止が済んでも、変更自体は実施していません。「受領済」「停止済」「変更実施済」を一つの完了欄で代用しないための区別です。
完成した装置に使った版を記録する
最後に、計画上の採用版と実際に使った版を照合します。製造担当は製番、製造日、装置図版、BOM版、使用した部品図版・ロットを記録し、品質担当が検査記録と突き合わせます。最新マスターを表示するだけでは、後から版が変わった際に、製造時点の構成を説明できません。
新版へ切り替えた装置は、9月14日にv2/b2で完成しました。取付板の部品図v2とロットL-101-Bを記録します。旧版を続ける装置は、9月7日の完成時に使ったv1/b1と、取付板のロットL-103-Aを残します。加工を止めている装置は、完成日と完成時の実使用版が空欄です。再開には、現物の判断と必要な承認がそろう必要があります。
表から始めるか、既製品や連携を使うか
同時製作が少なく、変更対象と連絡先を一覧で照合できるなら、まず添付の管理表で運用を試せます。既製の生産管理・PLM(製品情報の管理システム)で、製番別採用版、顧客承認、手配への反映、旧版継続を表現できるなら、その標準機能を優先します。
候補製品を比べるときは、本例の3ケースを登録し、承認待ちが保留で残るか、旧版を使う製番が新版へ上書きされないかを試してください。固有の承認経路や外注先の記録が標準機能で扱えない場合は、不足する連携や画面だけを追加する方法を比べます。
Excelの管理表にはBOM二版、製番別採用版、変更影響、通知、製造実績の記入例と空欄版があります。まず一件の変更を転記し、未確定欄を誰が埋めるか決めてください。配布用チェック表は、その引き継ぎを部門間で行うためのものです。承認・適用・完了は、担当者が記入します。
資料は、図面改訂の管理表(Excel)と引継ぎチェック表(PDF)から取得できます。
製番と部材手配の引継ぎを具体的に整理する場合は、機械・装置の個別受注生産と部材手配管理を、部品構成や採用版の整理が中心なら、部品表・構成版の管理システム開発を参照できます。相談時には変更前後のBOMと、この影響表を用意すると、既製品で足りる範囲と追加が必要な範囲を分けて検討できます。
Dynamics 365の設計変更機能と、導入環境で試す設定
Microsoftの設計変更管理には、製品の版や部品構成の変更、承認・リリースに加え、既存取引への影響確認や通知も説明されています。現物の使用可否は、これらの情報を製番別にまとめて判断します(出典:Microsoft Learn「Manage changes to engineering products」)。
顧客承認の要否と取得状況は別々に持たせます。公式資料にも両者の項目がありますが、承認待ちを自動で適用禁止にするかなど、実際の制御は導入環境で試します(出典:「Fields on an engineering change order」)。
また、製品の版を取引に記録するかどうかは、Microsoftの機能でも設定によって異なります。製番ごとの履歴が残る設定かを、導入時に確かめます(出典:「Track versions in transactions」)。
Microsoftの製造指図通知も、変更を評価し必要な取消・修正を行った後に解決済みとする流れが説明されています。通知機能の利用条件は環境ごとに異なります(出典:「Review and process change notifications for transactions」)。
外注先へ渡した後の数量は、良品戻り、不良、再加工、未戻りに分けて納期を見ます(製造の外注工程管理|納期と仕掛品の数量を追う)。
参考出典
- Microsoft「Manage changes to engineering products」
- Microsoft「Engineering versions and engineering product categories」
対象:Dynamics 365 Supply Chain Management。資料更新日:2026年5月19日・5月29日、確認日:2026年9月15日。図面・部品表・製番の具体的な欄と処置は、説明用に作成した管理例です。



