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「12年前のシステムだから作り直し」は正しい?36か月の費用で比べる

今のシステムを残す部分と変える部分を、2社の36か月費用で比較します。現状維持、部分改修、段階移行の条件を並べ、未確認の費用や停止条件を記入。判断を見直すためのExcelと印刷用PDF付き。

12年前のシステムを修正するか作り直すか、資料と36か月の費用で比較する。

古いシステムを直すか作り直すかは、「古い」を観察できる問題に置き換え、ソース・データ・権限・復元手順がそろうかを調べてから、現状維持・部分改修・段階移行の総負担を同じ期間で比べて決めます。

たとえば「12年前に作ったシステムなので、全面的に作り直しましょう」。不具合や変更費用が増えていると、そう言われて迷うものです。ただ、困りごとが月末帳票だけなのか、受注から請求まで業務全体に及ぶのかで、必要な対応は違います。

利用12年・利用者15人の受注システムを使う2社を比べます(想定例)。月末帳票だけに困るA社は、更新・復旧ができることを確かめ、部分改修を候補にします。分割出荷に対応できず、帳票基盤の更新経路もないB社は、画面だけを直しても問題が残るため、移行を検討します。

同じ年数でも、残せる部分は違います。業務との適合、保守できる根拠、停止・移行の条件と同じ期間の費用をそろえて比べます。A社でも、転記作業を続けられる条件なら現状維持へ判断が変わります。

対象は、稼働中で、ソース・データ・管理権限の所在を調べられる業務システムです。不明な項目を推測で埋めず、調査後に結論を変えられる判断表を使います。以下の比較表は、自社の条件を整理するための記入例です。

年数よりも、困っている操作を調べる

まず「古い」を、観察できる問題へ置き換えます。業務不一致なら、対応できない取引や二重入力を特定します。性能なら、遅くなる操作と時間帯、対象件数を書き出します。停止なら、発生頻度だけでなく、止まる仕事と代替手段を確認します。更新不能なら、OS・データベース・外部部品のどこに更新経路がないのかを分けます。担当者不在なら、連絡先だけでなく、再現・変更・復旧を誰が担えるかが調査対象です。

「遅いので刷新」と決める前に、たとえば月末の特定集計だけが遅いのか、取引の設計そのものが業務に合わないのかを確かめます。原因が不明な段階では、性能改善の効果も、作り直した場合の解消も断定できません。問題・業務影響・必要な改善を一組で書くと、四つの案を同じ目的で比較できます。

IT基盤や資産を把握し、重要な情報を管理するというIPA「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン」第4.0版の原則を出発点に、問題の範囲を絞ります。

調査と保守に必要な資料・担当者

「資料がある」と「保守できる」は分けて書き出します。ソースは本番の版と一致するか、データは定義と取り出し方が分かるか、管理権限は会社として利用できるかを確かめます。仕様書が古ければ、現在の正常な画面や帳票、業務担当者の説明と照合します。バックアップも、取得済みという説明だけでなく、対象と復元手順を確認します。

バックアップは、対象・頻度・保管方法・復元手順を記録します(IPAの同ガイドライン、本文33ページ)。判断表では「所在確認」「検証済み」「不明」を分けます。復元を試していないものは、保守できる証拠に置き換えません。

技術調査と契約上の論点も別です。IPAのモデル契約書案内は、契約不適合、報酬、成果報酬型準委任、協力義務、再構築対応などを別の論点として整理しています。ソースやデータを変更・移行する権利は、実際の契約と利用許諾、現行法に照らして確認し、不明な点を残してください。

資料と権限をどう引き継ぐかは、他社開発システムの保守引き継ぎで調べることで詳しく扱っています。資料・権限・復元の調査結果を、残す範囲と変える範囲の判断に使います。

四つの案を、同じ条件で比べる

現状維持・部分改修は残す範囲、段階移行は移す順序、全面刷新は作り直す範囲を表します。全面刷新を段階的に切り替えることもできます。判断表では重複を避けるため、各行を具体的な実施案にします。以下の全面刷新の費用例は、一括切替を想定した案です。

表1 四つの案を選ぶ条件

比較する案 選ぶ根拠 採用前に残る調査
現状維持 業務に合い、更新・復旧と担当を確保できる。 運用負担を許容できるか。見直す期限はいつか。
部分改修 問題が局所的で、既存部分への影響を追える。 改修後も更新不能や業務不一致が残らないか。
段階移行 業務単位に分けられ、併用中の整合を管理できる。 同期・教育・二重運用を負担でき、旧側を廃止できるか。
全面刷新 局所修正では必要な業務や基盤を成立させられない。 要件を選び直し、移行と受入を完了できるか。

維持には、監視、必要な更新、復旧準備、問い合わせ対応を含めます。また、手作業を減らす必要がないのに大きく作り直す案と、必要な取引を処理できないのに安さだけで維持する案は、どちらも比較の目的を外しています。

例A:業務はほぼ合う。技術的な古さだけでは刷新しない

冒頭の2社について、調査で分かったことと費用を比べます。比較期間は2026年10月から2029年9月までの36か月、単位は万円です。

A社は月末帳票の転記が負担ですが、受注と請求の流れは業務に合っています。調査前は「古い」という理由で刷新を想定していました。調査した結果、対象版の再現・復元、会社の管理権限、36か月の更新経路を確認でき、帳票だけを変更できると分かった、という設定です。

表2 例Aの36か月の総負担比較(架空・万円)

以下は、外部への支払額と社内作業時間の換算額を合計した「総負担」です。資金計画には支払額だけを、作業負担の比較には社内時間を別に集計します。自社の案は、配布Excelの「支出と時間」で両者を分けて入力してください。たとえば転記時間が短くなっても、利用料や委託費が変わらなければ、その分の現金支出が減るわけではありません。

比較する案 初期の総負担 継続36か月の総負担 移行・教育等の総負担 合計
現状維持 12 216 12 240
部分改修 70 108 26 204
段階移行 150 108 73 331
全面刷新 240 90 82 412(条件外)

この総負担を支払額と時間換算に分けると、次の内訳です。外部支出は税抜、社内時間は1時間0.5万円で換算しています。初期・継続・移行等それぞれの内訳は配布資料に載せています。

例A:支払いと社内時間の内訳
例Aの案 外部支出 社内時間の換算額 総負担
現状維持 88 152 240
部分改修 130 74 204
段階移行 235 96 331
全面刷新 324 88 412(停止条件外)

この条件なら部分改修が第一候補です。初期費用は維持より高くても、転記作業を含む継続費用との合計は204万円になります。ただし、計画停止2時間以内を受入条件とし、実証後に確定します。全面刷新の現案は4時間停止を仮置きしているため条件外で、停止方式を変える費用は不明です。412万円はその追加費用を含みません。

転記時間そのものが減る別条件も比べます。説明用の仮定として、月6万円を「外部支出2万円+転記8時間×0.5万円」とします。転記が月4時間まで減れば「2万円+4時間×0.5万円=4万円」、36か月の総負担は12+4×36+12=168万円になります。外部支出は月2万円、36か月全体では88万円のままです。社内時間の換算額が152万円から80万円へ減り、総負担が168万円になります。残る転記が許容でき、更新・復旧の条件も満たすなら現状維持が候補になります。転記負担を許容しただけで、時間が変わらなければ月6万円・総負担240万円のままです。新拠点を設ける計画は不明として対象外に残し、36か月内の実施が決まったら、部分改修で足りるかと費用を調べ直します。

例B:業務不一致が大きい。画面だけ直しても解決しない

B社は分割出荷と拠点間在庫が必要なのに、現行データが単一受注を前提にしています。加えて、帳票基盤に更新経路がないと調査で分かった設定です。画面だけの部分改修では両方が残ります。現行の再現・復元ができても、36か月の維持を認める根拠にはなりません。

表3 例Bの36か月費用比較(想定例・万円。社内作業の換算額を含む)

比較する案 初期の総負担 継続36か月の総負担 移行・教育等の総負担 合計
現状維持 15 216 既知15+追加基盤対応費(未確認) 246+追加基盤対応費(未確認)
部分改修 100 198 既知30+追加基盤対応費(未確認) 328+追加基盤対応費(未確認)
段階移行 210 144 既知88+データ整備費(未確認) 442+データ整備費(未確認)
全面刷新 300 126 112 538

B社も、分かっている額だけを支払額と時間換算に分けます。「内訳未確認の既知分」は金額自体は分かっていても、外部支出と社内時間に分けられていない部分です。現状維持・部分改修の支払予算は、下の詳細表にある判明分だけでは確定できません。

例B:支払いと社内時間の内訳
例Bの案 判明した外部支出 判明した時間換算 内訳未確認の既知分 総負担
現状維持 84 147 15 246+未確認の追加基盤対応費
部分改修 170 128 30 328+未確認の追加基盤対応費
段階移行 336 106 なし 442+未確認のデータ整備費
全面刷新 412 126 なし 538

現状維持の既知15万円、部分改修の既知30万円は教育・照合などの費用で、合計から除いていません。段階移行のデータ整備費も、金額と支出・時間の内訳を調査してから追加します。

受注・在庫を業務単位で移し、帳票基盤も廃止する段階移行を条件付き第一候補にします。ただし、暫定対策の下でも旧基盤を残せるのは最長8か月という設定です。期限内の廃止、各切替2時間以内、併用中に基準とするデータの管理を確認できなければ採用しません。維持と部分改修は、長期案としては条件外です。

段階移行の移行・教育等の既知分88万円は、並行運用30+教育18+照合・切り戻し28+終了・撤去12万円です。未確認のデータ整備費を442万円に加えて比較します。

全面刷新538万円と同額になるのは、整備費が96万円のときです。35万円なら段階移行477万円、110万円なら552万円となり、費用順位が逆転します。ただし、全面刷新も切替4時間以内の実証が前提で、費用が低いだけでは採用できません。

移行・併用・教育の費用まで入れる

比較表の総費用は、初期費用+36か月の継続費用+移行・教育等の費用です。初期費用には調査・設計・実装を、継続費用には保守・利用料・日常運用を含めます。継続費用は切替前後を通した月平均の仮定であり、切替前の運用負担も含むため、新システム稼働後の月額だけを36倍する計算とは区別します。

移行・教育等は、データ整備、新旧併用による追加費用、教育、照合・切り戻し準備、旧環境の終了・撤去、期間内の追加基盤対応に分けます。並行運用費は、継続費用と重複する通常運用を除いた追加分です。教育では、講師だけでなく受講する社員の時間も計上します。

例では外部支出を税抜きで、社内作業を仮の換算単価0.5万円/時間で評価し、費目ごとに含めています。割引計算、36か月後の更新、発生確率が不明な障害損失は含めません。表は、この期間と対象の範囲で比較する金額です。停止可能時間は費用とは別の必須条件です。

金額が未確認なら0円にせず「不明」とします。たとえばデータ整備は、件数だけでなく、重複・欠損・コードの意味を調査し、業務担当者と移行担当者に作業量を確認します。新旧連携が作れない、または安全に併用できない場合は、段階移行そのものが不向きです。部分改修で基盤の更新不能が残る場合も、画面修正の安さを採用理由にはできません。

切替後の入力をどこへ戻すかなど、照合・切り戻しの具体的な手順は、システム移行の切り戻し|新しい注文と訂正の扱いを参照してください。

直すか移すかを左右する箇所から調べる

最初は、不明点と方針が変わる条件を明らかにする調査を発注します。対象システム、問題の操作、止められない業務、手元にある資料を指定し、対象版の再現、復元、更新経路、改修の影響範囲をどこまで確認するか合意します。

調査票には、調べる事項、証拠、不明の理由、問い合わせ先、担当、期限、結果による分岐を記入します。例Bなら、データ整備費は業務担当と移行担当が同期要件・変換作業量から算出し、費用が増えれば全面刷新も再比較します。旧基盤を期限まで安全に使う条件を確認できなければ、8か月併用する案は進めず、停止方法や移行範囲から組み直します。

判断表は、記入済みの2例と空欄版を用意しています。Excelで記入・計算するか、印刷用PDFを使い、費用と「何が分かれば決められるか」を記入してください。

費用順位を見て、すぐに決めない

  • 月末帳票など、一部の操作だけが問題: 更新・復元でき、修正の影響を追えるなら、現状維持と部分改修を比べる。例Aのように、残る手作業の量が変われば結論も変わります。
  • 必要な取引を扱えない、更新の道筋がない: 画面だけ直す案で問題が残るかを調べる。残るなら移行・刷新を比較し、旧システムをいつまで使えるかも条件にします。
  • 段階移行が安く見えるが、データ整備費が不明: 未確認の費用を「かからない」と扱わず、方針が変わる金額から優先して調べる。例Bでは96万円を境に費用順位が変わります。
  • 停止時間や復元の条件を満たせない・分からない: 安い案でも確定せず、切り替え方と調査範囲を見直す。費用と、業務を続けるための条件は両方必要です。

96万円の境目を、調査依頼の質問に変える

例Bで次に聞くのは、「データ整備はできますか」だけではありません。「重複・空欄・コード変換の何件を誰が直し、その費用と社内時間を含めると、段階移行と全面刷新の費用順位は変わりますか」と聞きます。回答が幅のある額なら、低い側だけで比較総額を確定せず、条件と幅を残します。

さらに、8か月以内の旧基盤の廃止、切替2時間以内、戻す際の新規注文と訂正の扱いを別に確かめます。費用差が解消しても、この条件を満たせなければ段階移行の採用理由にはなりません。調査先には、保守引き継ぎの依頼先を比べる質問を使い、調査後に受け取れる結果から確認できます。

調査結果を次の検討へつなぐ

作り直す方針が見えてから、既製品を使うか独自に作るかを比べる場合は、SaaS・パッケージ・独自開発|3年・5年の費用比較が次の検討に役立ちます。

資料や運用を調べて残す部分と変える部分を決めたい場合は、困っている操作、止められない業務、手元の資料、不明な項目を整理すると、相談で調べる範囲を具体的に話し合えます。

FileMakerを使っている場合は、帳票を残して受付だけをWebへ移す案も比較できます(FileMakerを残す?Web移行を選ぶ判断表)。

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参考出典

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