AIで提案書や報告書を作るときは、下書きのあと、宛名・対象月・数字・契約条件を元資料と見比べてから提出します。文章が自然でも、資料を取り違えていることがあるためです。
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売上「50%増」、正しくは25%増。AIで作る提案書・報告書の数字の確かめ方
もっともらしい報告書でも、元資料の顧客や期間を取り違えていることがあります。誤りを含む練習用の報告書を使い、数字と条件を元表へ戻って点検。下書きを確定版にする前の確認を照合表にまとめられます。
影山 湧亮 / NeoLogic株式会社 代表取締役。元警視庁。現場業務の整理と生成AI活用・Webシステム開発を一貫して担当。

たとえば、月次報告の受注件数が前月のまま、提案書のサポート条件が別の顧客のもの、といった誤りです。
月次報告と提案書に、別の月や顧客の情報が混ざった例で見ていきます(想定例)。数字や契約条件はこの例の設定です。誤りを入れた草稿と直した後の文章を見比べると、提出前に見る箇所が分かります。
【月次報告の誤り入り草稿】①株式会社みなと企画様向け、2026年8月の月次報告です(C05)。②受注は100件(C01)、売上は1,500,000千円・税抜(C02)で、前月比50%増です(C03)。③納期遵守率は92%です(C04)。
【提案書の条件説明の誤り入り草稿】④無償サポートは60日(C06)、契約は自動更新されます(C07)。⑤9月の売上は180万円・税抜を保証します(C08)。
元資料の数字を並べると、文章の読み直しだけでは見落としやすい違いが分かります。
| 元資料の抜粋 | 7月 | 8月 |
|---|---|---|
| あおば商事の受注件数 | 100件 | 120件 |
| 売上(税抜) | 120万円 | 150万円 |
| 納期遵守率 | 92% | 108件 ÷ 120件 = 90% |
売上は30万円増えています。増加率の分母は前月の120万円なので、30÷120=25%です。文章が流暢でも、草稿の「50%増」は採用できません。
古い宛名や数字を引き継がない資料の渡し方
最初に「何を根拠に書くか」と「どの形に整えるか」を分けます。前月の報告書を丸ごと渡して「今月版にして」と頼むのではなく、当月の元表、比較用の前月表、顧客別の条件、見出しだけの書式を指定します。古い宛名や数字は、書式の一部として扱いません。
Microsoftの「Draft and add content with Copilot in Word」は、ファイルなどを参照した下書き作成を案内する一方、詳細を確認・修正して正確さを確かめる必要があると説明しています。利用できる機能は契約や組織設定にもよるため、利用環境で確かめます。
「あおば商事向け・2026年8月報告」と提案書では、次の資料を使います。表の番号は配布Excelの資料台帳・元表と対応します。
どの資料を、何に使うか
| 資料ID・版 | 内容 | 今回の扱い |
|---|---|---|
| A-07-v1 | あおば商事・7月表 | 前月比較だけに使う |
| A-08-v2 | あおば商事・8月表 | 当月の実績の根拠にする |
| A-TERM-v2 | あおば商事の条件 | サポート・更新条件の根拠にする |
| B-TERM-v1 | みなと企画の条件 | 今回は採用しない |
| FMT-v1 | みなと企画の旧報告書 | 見出し順だけ取り出す |
採用版は、対象期間の締めと担当者の承認が済んだ版を指定します。このExcelは照合用です。AIへの入力は利用環境の対応形式に合わせ、抜粋にも元資料版とセル位置を残します。AIへの依頼文そのものを使い回せる形に整える方法は、AIへの頼み方を整えるで説明しています。
今回の文書に使える資料だけを渡す
資料を閲覧できることと、その内容をAIへ入力したり別の顧客へ渡したりできることは、分けて考えます。本例では、あおば商事の資料を同社向け文書に使う許可があるものと設定します。ただし一般公開は不可、みなと企画の資料は今回の入力・出力とも対象外です。
実務では対象顧客、対象期間、用途、入力を許可する環境、提出先を作業票に記入し、判断できない資料は渡しません。別顧客の条件を「参照しないで」と指示するだけでなく、入力候補から外します。月次報告の書式は「宛先・対象月/実績」、提案書は「宛先/契約条件」の見出しだけにします。社内の利用条件を先に整える場合は、生成AIの情報漏えいを防ぐ7つの社内ルールを参照してください。
入力時の指示は、どの資料を何に使うかを指定します。短い報告なら、見直す数字の横に元表のシート名とセルをメモする方法から始められます。たとえば「受注120件(08月元表・B5)」と下書きに添え、照合後に提出文からメモを外します。
入力時の指示例
あおば商事向け2026年8月の月次報告を作成してください。当月値はA-08-v2、前月比較はA-07-v1を使います。FMT-v1から取り出した「宛先・対象月/実績」の見出し順だけを使い、元の宛名・数字は転用しません。数字には元表の位置をメモし、根拠がない値は補わず「未確認」としてください。契約条件は報告書に含めません。
八つの誤りを元資料に戻って直す
数字の近くに出典名があっても、その出典が別の月・顧客なら採用できません。見直す数字と、元表のセル・単位を対応させます。長い文書を複数人で見直す場合や、同じ数字が何度も出る場合は、見直す項目に番号を付けると追いやすくなります。下の表では八つの項目に番号を付けています。本文だけでなく、表の見出し、グラフ、要約欄の同じ数字も照合対象です。
受注件数には前月の100件が混ざり、金額では「円」が「千円」に変わっています。売上前月比は前月の売上、納期遵守率は当月の対象件数を分母にします。同じ顧客・同じ集計方法の数字を使います。
元表へ戻る照合表
表1 誤り入り草稿と元資料の照合(説明用の架空例)
| 確認する点 | 草稿の誤り | 元資料に照らした判断 |
|---|---|---|
| 件数(C01) | 前月の100件 | 8月の120件へ |
| 金額の単位(C02) | 1,500,000千円 | 1,500,000円=150万円・税抜へ |
| 前月比(C03) | 50%増 | (150−120)÷120=25%増へ(単位:万円) |
| 納期遵守率(C04) | 前月の92% | 当月108件/120件の90%へ |
| 宛名(C05) | みなと企画 | あおば商事へ |
| 無償サポート(C06) | 別顧客の60日 | 30日間(検収完了日起算)へ |
| 更新条件(C07) | 自動更新される | 自動更新なし。双方の書面承認が必要 |
| 9月の売上(C08) | 180万円を保証 | 根拠がないため不採用。0円には置き換えない |
元資料の版・セル位置・確認担当まで照合する
| 確認番号 | 照合内容 |
|---|---|
| C01 | 元資料版:A-08-v2。対象期間:2026年8月。元数値:120。単位:件。草稿値:100。引用箇所:08月元表!B5/草稿②。修正内容:前月100件を当月120件へ修正。確定者:確認者A(架空)。 |
| C02 | 元資料版:A-08-v2。対象期間:2026年8月。元数値:1,500,000。単位:円・税抜。草稿値:1,500,000千円。引用箇所:08月元表!B6/草稿②。修正内容:単位を円へ修正。150万円と表示。確定者:確認者A(架空)。 |
| C03 | 元資料版:A-07-v1+A-08-v2。対象期間:2026年7月→8月。元数値:25。単位:%・売上前月比。草稿値:50%増。引用箇所:07月元表!B6・08月元表!B6,B9/草稿②。修正内容:150万円と120万円を用いて増加率25%を再計算。確定者:確認者A(架空)。 |
| C04 | 元資料版:A-08-v2。対象期間:2026年8月。元数値:90。単位:%・108件/120件。草稿値:92%。引用箇所:08月元表!B7:B8,B10/草稿③。修正内容:当月の分子108件・分母120件で90%へ。確定者:確認者A(架空)。 |
| C05 | 元資料版:A-08-v2。対象期間:2026年8月。元数値:株式会社あおば商事。単位:名称。草稿値:株式会社みなと企画。引用箇所:08月元表!B3/草稿①。修正内容:書式見本の宛名を対象顧客へ置換。確定者:確認者B(架空)。 |
| C06 | 元資料版:A-TERM-v2。対象期間:架空契約の検収完了日を起点とする期間。元資料の設定は30日間。元数値:30。単位:日・無償サポート。草稿値:60日。引用箇所:条件!B6/草稿④。修正内容:別顧客の60日を採用せず30日へ。確定者:確認者B(架空)。 |
| C07 | 元資料版:A-TERM-v2。対象期間:契約更新時。元数値:自動更新なし/双方の書面承認が必要。単位:条件。草稿値:自動更新される。引用箇所:条件!B7:B8/草稿④。修正内容:否定を戻し、更新に必要な条件も明記。確定者:確認者B(架空)。 |
| C08 | 元資料版:未取得。対象期間:2026年9月。元数値:未確認。単位:円・税抜。草稿値:1,800,000を保証。引用箇所:対応する元資料なし/草稿⑤。修正内容:根拠未取得のため不採用。0円に置換しない。確定者:—(未確定)。 |
「元数値」欄は名称や条件も記入できる共通欄です。元表の数式が算出するのは計算結果であって、主張の採用可否ではありません。C08の元資料は存在せず、180万円を確認済みや0円へ置き換えることもできません。文書から外す判断と、数値が正しいと確定する判断は別に記録します。
前月が0円なら、25%増の式をそのまま使わない
元表の売上120万円から150万円への変化は、差30万円を前月120万円で割るため25%増です。150万円を分母にした20%や、文章中の50%とは異なります。納期遵守率も、108件÷120件で90%です。
数字と単位を照合する教材(ZIP)の proposal で、この計算と単位換算を分けて確認できます。2026年10月26日に、金額を円へそろえてから増加率と割合を計算しました。
| 元資料を一つ変える | 照合後の扱い |
|---|---|
| 120万円→150万円 | 増加率25%。比較対象と分母を残す |
| 金額欄1,500、表の単位は千円 | 1,500,000円へ換算。数字だけを本文へ貼らない |
| 前月だけ0円へ変更 | 同じ増加率は計算しない。前月0円・当月150万円と金額で示す |
前月0円のときに「無限%増」や、前の草稿の25%を残さないことも確認します。数字を直した後は、グラフの見出し、要約、提案条件に同じ誤りが残っていないかを探してください。
これは架空の元表を通常計算で照合した結果です。AI製品に草稿を生成させた成績ではありません。数字が合っても、宛名・対象月・条件の出典が違えば提出できないため、C01〜C08の照合へ戻します。
翻訳や要約で、否定と条件が落ちていないか
文章の照合では、名称・数字に加えて否定、条件、比較対象を見ます。更新条件の英語原文は「The agreement does not renew automatically. Renewal requires written approval from both parties.」です。対応する日本語は「契約は自動更新しない。更新には双方の書面承認を要する」です。
「自動更新される」は否定の逆転です。また「自動更新しない」だけでは、更新に必要な承認条件が落ちています。売上前月比も「売上が25%増」と短くする際に、7月との比較だと分からなくならないかを見ます。訳文の自然さだけで決めず、原文と訳文を並べ、重要な条件はその業務内容を判断できる人が確かめます。原文が不明、読めない、内容が相反する場合は保留します。
提案書なら同じ要領で、納期の起算日、見積りの税区分、費用に含まれない作業、条件付きの対応範囲を照合します。文章を整える段階でも、この限定を消さないようにします。原文版・訳文・確認担当を一緒に管理する方法は、AI翻訳と多言語文書の確認画面開発で紹介しています。
直した文章を提出するまで
下書きと提出する確定版を分けます。少量の文書なら、元資料・直した内容・確認日をコメントや変更履歴に残す方法で始められます。複数人で回すときは、下書きv0.1、修正版v0.2、確定版v1.0のように版と確認番号も残します。元資料と照らす担当と文書の提出を判断する担当を決め、少人数なら兼務でも、その役割を記録します。AIの自己評価や表計算の一致表示を、担当者の承認の代わりにはしません。
本例では2026年9月15日に、担当者二人が数字と契約条件を分担して修正を確かめた設定です。根拠のない9月の売上予測は削除し、提出を判断する人が最終稿を読みます。
照合後の月次報告
株式会社あおば商事様向け、2026年8月の月次報告です。受注は120件、売上は150万円・税抜です。7月の売上120万円・税抜と比べ、25%増加しました。納期遵守率は、当月の対象120件のうち108件で90%です。
照合後の提案書の条件説明
無償サポートは30日間です。検収完了日を開始日とします。契約は自動更新せず、更新には双方の書面承認が必要です。
見本の確認メモ
完成文では照合用の番号を外し、根拠のない9月予測も削除しています。元資料と修正内容は、提出文と別に保管します。
照合表のExcel(記入例・空欄版)と、印刷用のPDFチェックリストを取得できます。Excel・PDFの照合表は、元資料版・期間・単位などを別々に記入できる9列です。
まず、次に提出する文書の数字を一つ選び、元表の月・単位・計算に戻ってみてください。詳しい照合記録を付ける場合は、配布Excelを使えます。Excelの「照合_空欄」を使う場合は、元資料を資料台帳へ登録します。別シートの進行記録では採用・保留・不採用と日付を管理してください。売上前月比と納期遵守率は、必要な入力が空欄や文字列なら「未確認」、分母が0なら「算出不可」と表示します。数値として入力した0は空欄と区別します。計算結果だけで確認状態は更新されません。
元表の更新や提出先の変更があれば、その資料に基づく記述を見直します。未確認事項を残したまま出す必要がある場合も、提出範囲から外すか、未確認と明示した扱いを責任者が判断します。
少数の文書で、許可した資料と書式を使い、担当者が元表まで戻れるなら、汎用AIや既存の文書作成機能とこの確認表で始める選択肢があります。複数の台帳からの取得、資料版と主張IDの対応、承認や差し戻しを画面で扱う必要が出た段階で、追加開発を検討します。進め方はAIによる業務文書・提案書・報告書の作成支援でも紹介しています。
提案書を別の言語へ変えるときも、数字・否定・条件が保たれたかを原文と見比べます(AI翻訳の選び方|数字・否定・条件を確かめる)。


