生成AIツールは、使う場面を決め、入力してよい情報を分け、その情報を扱える契約・設定の候補に絞ってから、同じ課題で試して選びます。
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機能表では決まらない。仕事に合う生成AIツールを選ぶ順番
問い合わせ返信、公開情報の調査、社内検索では、必要なAIの条件が変わります。入力する情報と保存・権限の条件を並べ、自社で許可できる使い方を判断。条件が足りない場合の代替案も比べられます。
影山 湧亮 / NeoLogic株式会社 代表取締役。元警視庁。現場業務の整理と生成AI活用・Webシステム開発を一貫して担当。

営業と事務で8人の印刷会社が、問い合わせ返信の下書きに生成AIを使おうとしています(想定例)。比較表には便利な機能が並びますが、顧客名を入れてよいか、誰が使うか、AIが書いた納期をそのまま送ってよいかは、機能名だけでは決まりません。
この会社が作りたいのは、担当者が読んで送る返信の下書きです。顧客への自動送信は使いません。必要な用件だけを渡せるか、残る情報をどの契約・設定で扱えるかを、候補製品と照らし合わせます。実際の資料を入力するのは、その条件が確かめられてからです。
まず利用場面を決める
「公開された印刷方式を調べる」「問い合わせ返信の下書きを作る」「営業の手順書を探す」のように、使う資料と欲しい出力まで決めます。
公開ページだけを調べるなら、質問に顧客の事情を書かずに試せます。一方、顧客から届いた資料を要約するなら、個人情報や取引条件が含まれるか、その資料を外部サービスへ渡してよいかを先に確かめます。資料を読む目的が同じでも、扱う情報に合わせて入力範囲を決めます。
最初は一つの業務を選び、「誰が、何を入力し、何の下書きを作り、誰が確かめるか」を一文にします。候補を比べる担当者は、その条件を満たす契約・機能・設定を調べます。条件に合うか分からない間は、公開情報や説明用の架空資料で試します。
入力する情報を分ける
最初に、AIへ入れてよい情報と入れない情報を分けます。顧客の個人情報、契約情報、未公開の提案、原価や利益率は、会社として扱いを決めておくべき情報です。
入力する資料は、次のように整理すると具体的に考えられます。
- 公開情報:一般に公開された説明や資料。入力時に未公開の事情を付け足さない。
- 社内限定情報:社内の手順書など。会社が入力を認めた範囲と環境で使う。
- 個人情報・取引先の機密情報:利用目的、契約上の制約、サービス側の扱いを調べて判断する。
- 認証情報:パスワードや認証コードなど。通常の質問や資料として入力しない。
先の印刷会社では、社名入りの原稿データ、単価の入った請求書、担当者の携帯番号が一通のメールに混ざることがあります。「返信作成に使ってよい」と決めるだけでなく、何を削り、何を残してよいかまで決めます。
名前を「A社」に変えても、日付・商品・金額・経緯の組み合わせから相手が分かる場合があります。必要な内容だけを抜き出し、それでも特定につながる情報や機密が残るなら、その環境には入力しません。名前を置き換える作業と、入力してよいかの判断は分けます。
個人情報保護委員会は、個人情報取扱事業者に対し、入力が利用目的の達成に必要な範囲か確認するよう求めています。また、本人の同意なく入力した個人データが、回答の出力以外の目的で扱われる場合に注意を促し、提供者が学習に利用しないこと等の確認を求めています。法的な区分や保存条件を詳しく確かめるときは、入力前の確認手順で担当者への質問をそろえます(出典:個人情報保護委員会「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等」(PDF))。
社内条件と製品設定を照らし合わせる
会社で必要な条件を書いたら、候補の契約プランと実際に使う機能を調べます。法人契約でも、保存や共有、管理者ができる操作の範囲はサービスごとに確かめます。
調べるのは、組織が利用者を追加・停止できるか、入力や添付資料が学習に使われるか、何がどれだけ保存されるか、誰が見たり削除したりできるかです。退職時にはアカウントの停止に加え、共有した会話や連携先へのアクセスがどうなるかも確かめます。学習に使わないという条件と、保存しないという条件は別に調べます。
社内資料検索では、営業担当が見られる価格表と、経理だけが見る原価表を、AIの検索範囲でも分ける必要があります。人の閲覧権限がAIの検索にも反映されるかを試し、異動や退職後も以前の資料が表示されないかを確かめます。「見せないように回答して」と指示するだけで済ませません。
次の表には、印刷会社が製品選びの前に決めた条件を記入しています。「不足機能」は不足した場合の仮定です。製品を調べた日付と結果は、実施後に記入します。選ぶプラン名と読んだ資料は、照合表と一緒に残してください。社内条件とAI製品設定の照合表(Excel)には、記入用と3用途の記入例を収録しています。
問い合わせ返信の条件を記入する
| 項目 | 記入例 |
|---|---|
| 用途 | 問い合わせへの返信案を作り、担当者が直して送る。 |
| 入力情報 | 顧客名・連絡先・注文番号を除いた質問。特定につながる経緯も削る。 |
| 契約種別 | 会社が利用者と設定を管理できる契約を候補にする。 |
| 学習利用 | 入力を学習に使わない条件が、選ぶプランと使う機能に適用されるか調べる。 |
| 保存条件 | 保存期間、削除後の扱い、管理者・提供者の閲覧条件を調べる。 |
| 権限 | 担当者だけが利用する。顧客への自動送信は接続しない。 |
| 不足機能 | 必要な保存・削除条件を満たせない場合を想定する。 |
| 代替運用 | 実際の問い合わせは入力せず、公開FAQから返信の型を作るか、別の契約を選ぶ。 |
| 調べた日 | 候補プランを調べた日に記入する。 |
公開情報の調査と社内検索では、どこが変わるか
契約プラン、学習利用、保存・削除、権限は、ほかの用途でも調べます。返信案の条件をそのまま当てはめず、入力情報と連携先の違いを見ます。
| 用途 | 返信案と異なる条件 | 条件を満たせない場合 |
|---|---|---|
| 公開情報の調査 | 公開URLと一般的な質問だけを使い、顧客の事情や社内資料を渡さない。保存期間と利用者が削除できる範囲を確かめ、原文で結果を確かめる。 | 会社による一括停止ができない契約なら、この例では公開情報の調査に限定。社内資料を扱う前に管理できる契約を選び直す。 |
| 社内資料の検索 | 許可された最新の手順書を対象にする。検索用の複製にも保存・削除や学習利用の条件が適用されるか、元資料の削除・権限変更がいつ反映されるかを確かめる。 | 人ごとに検索範囲を分けられなければ、全員が読める資料に絞る。それでは目的を果たせないなら、別の製品を選ぶか連携を見送る。 |
必要な作業に使えなくなるほど範囲を狭めるなら、別の契約や製品を比較します。
出力の確認と利用の記録を決める
AIが書いた納期の一文は、人が見直す箇所の典型です。文面が自然でも、納期の根拠が工場の予定表にあるかは別に確かめます。顧客へ送る数字、金額、日付は、送信の前に人が根拠と突き合わせます。調査結果を使う場合も、出典の原文を開き、対象・時期・条件が合っているかを見ます。
資料を検索したり外部サービスと連携したりする場合は、資料内の文章によってAIの動作が変わる問題にも備えます。例えば、外部メールに含まれた指示を受けて、社内資料を送ってしまう使い方は避けたいところです。参照できる資料と実行できる操作を絞り、重要な送信や変更は人が確かめる形にします。OWASPも、権限の限定、重要な操作への人の関与、外部資料の分離を対策に挙げています(出典:OWASP「LLM01:2025 Prompt Injection」)。
記録は、問題が起きたときに振り返れるよう、使う目的を決めて残します。この印刷会社なら、利用者・日時・業務・利用環境・社外に出す前に見直した人を基本にし、困ったことや誤りがあれば追記する運用が考えられます。製品側で取得できる記録も調べ、同じ内容を何度も手入力させないようにします。
会話の全文保存を既定にはしません。本文や添付資料まで残す必要がある場合は、誰が閲覧でき、いつまで保存し、どう削除するかを決めます。記録自体に機密を増やさないことも必要です。誤入力や誤送信には、入力範囲の制限と送信前の見直しで備えます。
比較途中で「自動送信も」と変わったら、同じ条件で採点しない
8人の印刷会社の例で、目的は「担当者が読んで送る返信の下書き」です。候補を試している途中で「確認を省いて顧客へ自動送信したい」と変われば、出力の確認担当や誤送信時の対応まで比較条件が変わります。文章の自然さだけを採点した結果は、そのまま使えません。
| 比較前の条件 | 次に進める作業 |
|---|---|
| 未公開の取引情報を使いたいが、入力できる契約・設定は不明 | 入力を保留し、公開情報や架空資料で課題を作る |
| 必要な入力範囲と契約・設定を確認済み | 同じ用件・資料・出力条件で下書きを比較する |
| 下書き作成から顧客への自動送信へ変更 | 用途変更として、送信の条件と人の関わり方を決め直す |
選定条件の学習教材(ZIP)の tool-selection は、この三条件を分けた架空の判定例です。2026年10月26日に、入力条件が不明な候補を保留にし、用途を自動送信へ変えた場合は別の検討へ戻ることを確認しました。実在製品の契約適合や性能を採点したものではありません。
実際に比較する課題では、「顧客は木曜納品を希望しているが、社内の確約はない」といった未確定情報を一つ入れます。勝手に納期を約束する返信を出さないか、人が直す時間はどれくらいかを記録します。比較の詳しい課題例は返信案で未確定の訪問日を約束しない例へつながります。
一つの業務で確かめて運用を整える
ここまでで会社として許可できる用途・契約・設定を絞ります。回答の品質と修正時間は、同じ仕事で製品を比べる手順で試します。顧客資料や社内資料を使う段階へ進む前に、その入力を許可できるか、設定と運用がそろっているかを確かめます。
利用者向けには「使ってよい業務と環境」「入れてよい情報」「送る前に確かめる箇所」「迷ったときの相談先」を短くまとめます。管理者は別に、契約プラン、設定、利用者の追加・停止、保存・削除、権限変更、調べた日を管理します。利用者全員に管理画面の詳細まで覚えてもらう必要はありません。
社内ルールの文面を整えるときは、生成AIの情報漏えいを防ぐ7つの社内ルールを参照してください。利用中に対象業務や契約・機能が変わったときは、この照合表に戻って見直します。
自社の業務に合う入力範囲や管理設定の整理は、導入支援でもお手伝いしています。
次に調べる内容に合わせて、会社で使うAIの契約|個人・法人プランの比べ方、AIへ社内情報を入れる前に|学習・保存・共有、日本企業のAI利用|法律とガイドラインの読み方も参照できます。


