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毎日30分の二重入力より、月1件の漏れを先に直す。使われないシステムの立て直し方

二重入力、例外的な注文の漏れ、色分けの要望。実際の仕事への影響を比べ、先に直すもの、試すもの、追加で調べるものを選びます。修正後に何を測ればよいかまで考えられる記事です。

二重入力、処理漏れ、一覧の色分けという改善候補を、影響・頻度・根拠から整理するイラスト

使われないシステムを防ぐには、導入後の改善要望を、業務への影響・頻度・根拠で比べて影響の大きいものから直し、直した後も同じ仕事で効果を確かめます。

たとえば、毎日30分の二重入力、月に1件の例外注文の漏れ、一覧を色分けしてほしいという要望。同じ受注システムに三つの困りごとがあったら、どれから直すでしょうか。

先に扱うのは月1件の処理漏れです(想定例)。回数は少なくても、出荷されない注文が残り、納期に影響します。毎日の二重入力は一部の注文で改善を試し、色分けは、何を探しにくいのかを見てから決めます。

使われないシステムを立て直すときも、使っていない理由は一つとは限りません。入力件数を増やす前に、実際の注文を追い、画面の外に残っている作業と、その影響を確かめます。

すぐに書き始められるよう、判断表のExcel版と印刷用PDFを用意しました。Excelは「記入用」と「記入例」の2シート、PDFは空欄版と3件の見本を収録しています。

改善要望は影響と根拠から選ぶ

要望が多い機能から作ると、少数の担当者だけが困る重大な問題を後回しにするおそれがあります。まず、納期や重要な処理に影響する問題がないかを見ます。そのうえで、発生頻度、変えたときに得たい成果、費用、原因をどこまで確かめたかを並べます。

費用は比較のための仮置きです。変更後の結果は、実施して測ってから書く欄として空けています。

毎日の二重入力

受注台帳とExcelに同じ注文を入力し、1件3分の再入力が1日10件ある想定です。台帳から集計用の情報を出せれば、転記を減らせる可能性があります。

項目 記入例(想定)
困る場面 受注台帳とExcelへ同じ注文を入力
利用者 受注担当・集計担当
頻度 1営業日10件
影響 1件につき約3分の再入力
原因仮説 集計に必要な項目を台帳から出せない
変更案 一部の注文で、台帳の出力を集計に使う
費用 改修費5万円・社内対応4時間(仮置き)
根拠 同じ項目への転記を作業観察で見つけた想定
成果指標 同じ種類の注文10件の入力・確認・修正の合計時間
再確認日 2026-10-02

重複する項目が分かっているので、まず一部の注文で台帳の出力を使ってみます。入力が減っても集計担当の手直しが増えれば、改善になりません。入力・確認・修正を通した時間で比べます。

例外注文の処理漏れ

承認を待つ例外注文が、承認後も出荷一覧に戻らない。月1件でも、納期遅れにつながる問題です。

項目 記入例(想定)
困る場面 承認を待つ例外注文が出荷一覧に出ない
利用者 受注担当・出荷担当
頻度 月1件
影響 出荷漏れ・納期遅れにつながる
原因仮説 承認後も一覧の対象へ戻らない
変更案 当日の照合を始め、承認後の表示条件を直す
費用 改修費12万円・社内対応8時間(仮置き)
根拠 該当注文と一覧の不一致を照合した想定
成果指標 例外注文の処理漏れ件数と期限内処理件数/対象件数
再確認日 2026-09-18

こちらは改修を待つ間にも出荷漏れが起こり得ます。当日分の例外注文を担当者が照合しながら、承認後に一覧へ戻らない条件を調べます。頻度の高い二重入力より先に、当面の対応を始める理由です。

一覧の色分け追加

一人の担当者から、注文が探しにくいので色分けしてほしいという要望が出ています。ただ、探し直す頻度や、並び順・絞り込みで解決できるかはまだ分かりません。

項目 記入例(想定)
困る場面 注文を探しにくいという色分けの要望
利用者 受注担当1人からの要望
頻度 探し直す頻度は不明
影響 探す時間が増えている可能性
原因仮説 色分けの不足か、並び順の問題か不明
変更案 探す作業を観察し、既存の絞り込みを試す
費用 改修費は未見積り・調査2時間(仮置き)
根拠 要望のみ。作業観察は未実施の想定
成果指標 注文を探す時間と取り違え件数(基準値は未測定)
再確認日 2026-09-25

色を足す前に、担当者が注文を探すところを見せてもらいます。納期順に並べれば見つかるのか、担当別に絞る必要があるのか。それが分かれば、追加機能を作らずに解決する可能性もあります。

表を使うときは、原因が分からない欄を推測で埋めず、何を見れば確かめられるかを書きます。選んだ変更案には担当者を決め、実施する範囲と再確認日を共有します。保留した要望にも、見直すために必要な情報を伝えれば、出した人が次に何をすべきか分かります。

使われない場面を分けて確かめる

「現場が使ってくれない」という一言では、直す場所が決まりません。入力自体がないのか、仕事が終わってからまとめて入力するのか、紙にも同じ内容を書くのかを分けます。担当者に、直近の注文を受けてから処理を終えるまでの流れを見せてもらうと、止まる場所を具体化できます。

例えば、入力されない注文があっても、入力忘れとは限りません。例外的な注文を受け付ける欄がなく、担当者が紙で補っている可能性があります。後からの入力も、作業場所に端末がない場合と、途中では必要情報がそろわない場合で、選ぶ対策が変わります。困る人、場面、回数とともに、分からない点も残します。

入力の目的と担当を見直す

入力に時間がかかる画面は、忙しい現場では続きません。項目を足したくなったら、その項目を誰がいつ見るのかを先に決めます。見る人のいない項目は入れない。事務側で補える情報は、現場に書かせない。この考え方を、導入後の見直しにも使えます。

受注台帳なら、出荷担当が翌日の作業を決めるために見る情報と、月末に集計担当が補えばよい情報を分けます。誰が、どの時点で、何を記録し、次の担当者が何に使うかを一つの注文で確かめます。入力時点で分からない項目を必須にしていないかも見直します。

通常の注文だけでなく、数量変更、取り消し、担当者不在のときの扱いも決めます。迷ったときの問い合わせ先を明らかにし、回答によって手順が変わったら、同じ仕事をする人へ伝えます。説明会を繰り返す前に、画面や手順自体に無理がないかを確かめるためです。

業務と画面の関係が分かりにくい場合は、流れと使う記録を簡単な表にします。IPAのセミナー資料も、成果物をプロジェクトの状況や利用目的に合わせて選び、前後の作業との関係を明確にする考え方を示しています。(IPAセミナー資料(PDF))判断表では、困る作業と、変更後に確かめる結果を並べて残します。

利用量と業務の成果を分けて測る

入力件数は、利用の変化を見つける手がかりです。件数が減った場合も、注文自体が減ったのか、記録されなくなったのかを分ける必要があります。利用の確認には「対象の注文のうち、必要な時点までに記録された件数」のように、対象と時点をそろえます。

効果の確認には、処理時間、修正件数、期限内に処理できた件数も使います。処理時間は入力だけでなく、確認、修正、別の台帳への転記まで含めます。利用回数が増えていても、この合計時間が増えたなら、作業が楽になったとは判断できません。

導入前の記録がなければ、今の運用を基準にして、小さな変更の前後を比べます。例えば同じ種類の注文10件を対象にし、比較日、担当者、注文の難しさを記録します。混雑期と閑散期を比べた場合や、経験の異なる担当者が処理した場合は、その違いも残します。時間が空くことと、実際の支出が減ることは分けて考えます。

変更後に確かめてから旧運用を止める

変更したら、同じ種類の仕事で、困りごとが解消したかを確かめます。入力が速くなっても出荷担当の確認が増えた場合は、仕事全体では改善していない可能性があります。想定した成果が出ないときは、原因の見立てと変更案を見直します。

処理漏れのように頻度が低い問題は、短期間に再発しなかっただけでは解消したと判断できません。漏れていた条件を使って試し、その後も対象の注文を追います。担当者の不在や例外的な注文でも、必要な処理が最後まで進むかを確かめます。

紙やExcelとの並行運用には見直す日を設けますが、「1か月たったら必ず停止」とは決めません。代表的な業務と例外処理が新しい方法で完了し、必要な記録が照合でき、問い合わせ先も決まった段階で、業務の責任者が停止日を決めて関係者へ伝えます。過去の記録は、必要な保管条件に沿って残します。

条件がそろわない場合は、残っている問題と次に見直す日を決めます。目的に合わない機能は縮小や利用終了も選択肢に入れ、必要な記録の取り出し方と業務の続け方を確認します。使い続けた期間の長さだけで、投資の成果を判断しません。

調査で分かることと、自社で調べる必要があること

調査の数字から読み取れること

kubellが2025年11月17〜19日に実施した調査は、従業員10〜299人の企業の経営者・管理職、バックオフィス担当者を対象とする1,093サンプルのインターネット調査です。57.5%がデジタル化着手時の失敗に関する選択肢のいずれかを選びました。複数回答には、利用が一部の人にとどまった経験や、ほとんど使われず放置された経験が含まれます。これは回答者の経験であり、導入されたシステム全体の失敗率ではありません(出典:kubell調査)。

SMBの調査は、2025年12月20〜23日に、製造・建設・運輸などの中小企業の経営者・役員・管理職と回答したモニター1,008人へ実施されています。このうちDXが「かなり進んでいる」「ある程度進んでいる」と答えた人への設問では、作業が増えた経験が「とてもある」26.2%、「ややある」56.3%でした。1,008社の集計でも、回答者全員に尋ねた割合でもありません(出典:SMB調査)。

両調査は、定着や作業負担を確かめる手がかりになります。ただし、対象・設問・時期が異なる数字を足したり、一つの失敗率にまとめたりはできません。自社の原因は、自社の作業から確かめます。

解約状況を正確に把握できていなかった事例

会計検査院は、IT導入支援事業の376事業主体445事業を調べ、101事業主体114事業でITツールの解約後も辞退届が出ていなかったと報告しています。そのうち79事業主体92事業では、継続利用を宣誓して効果報告を提出していました。報告は、辞退届と宣誓への同意だけでは、解約状況を正確に把握する仕組みとして不十分だったとしています(出典:会計検査院の報告(PDF))。

これは補助事業の特定の検査対象についての結果です。民間システム一般の未利用率には広げられません。また、不正の疑いがある事業者等への立入調査未実施は別の検査結果であり、この92事業すべての状況として結び付けないようにします。社内で利用状況を確かめる際も、担当者の回答に加え、実際の処理結果を照らし合わせると、認識の違いを見つけやすくなります。

次に整理すること

まず一つの困る場面を選び、判断表に記入してみてください。改善を依頼する際も、作ってほしい機能名だけでなく、誰がどの仕事で困り、何が変わればよいかを伝えられます。

同じ内容を複数の台帳に入れる問題は、二重入力を減らす|更新元と訂正の決め方で詳しく扱っています。試作段階の確認については、試作・PoC・MVPから本番へ進む条件と見送る条件で扱っています。改善要望の整理から開発まで相談したい場合は、対応内容をサービス一覧で確認できます。

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参考出典

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