システムの保守・運用で頼める作業と時間は、契約ごとに決まります。監視、問い合わせ、障害調査、修正、更新、機能追加、復旧を分け、月額に含む量と対応時間を見積書で確かめます。
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土曜の朝にシステムが止まった。保守費を払っていれば、その日に動いてもらえる?
月額料金に含まれる作業と対応時間をそろえて、保守の依頼先を比べます。平日日中に使う例と休日にも使う例から、追加費用が生じる条件、障害時の連絡、再開までの進め方を確かめられます。
影山 湧亮 / NeoLogic株式会社 代表取締役。元警視庁。現場業務の整理と生成AI活用・Webシステム開発を一貫して担当。

たとえば、土曜の朝、受注システムが止まりました。毎月保守費を払っていても、その日のうちに調査を始めてもらえるでしょうか。契約に「保守一式」とあるだけでは、何を、いつ、どこまで依頼できるかは判断できません。
特に、連絡を受け取ること、調査に着手すること、業務が復旧することは別の条件です。
新規・継続の保守契約を検討する際は、平日日中の利用と休日も使う場合で必要な対応を比べます。以下は、休日に人が対応するかで料金と作業が変わる例です(想定例)。
土曜10時の停止に、いつ人が動くか
Aは平日日中の保守で月5万円、Bは休日の重大障害も対象で月8万円とします(税別)。どちらも重大障害の調査着手目標は、対象時間内の累計2時間以内。2時間で調査を始めることと、2時間で業務が復旧することは違います。復旧までの時間は、原因と戻す手段を調べてから見積ります。
次の例は、土曜10時に停止連絡を受け、直前のプログラム変更を戻せた場合の経過を考えます。Aは休日の業務がなく次の平日まで待てる条件、Bは休日の受注を止められない条件とします。権限・手順・必要な作業枠があり、切り戻しが承認され、データの巻き戻しは不要だったと仮定しています。
停止連絡から恒久修正までの経過
| 段階 | A:平日日中利用 | B:休日利用あり |
|---|---|---|
| 停止連絡・受付 | 土曜10:00に自動受信。次の平日9:00に有人確認 | 土曜10:00に受信・有人確認 |
| 調査着手 | 次の平日9:20 | 土曜10:20 |
| 暫定復旧 | 同日10:20、プログラムを旧版へ戻す | 土曜11:20、プログラムを旧版へ戻す |
| 業務確認 | 同日10:40、顧客が受注・在庫を照合 | 土曜11:40、顧客が受注・在庫を照合 |
| 恒久修正 | 暫定復旧の2営業日後に、試験・承認を経て反映 | 暫定復旧の2営業日後に、試験・承認を経て反映 |
経過時間と請求する人時は分けて記録します。また、原因不明、外部サービス側の停止、権限不足、データ破損などがあれば、同じ手順や時刻では進みません。着手が早いだけでは業務の停止時間を決められず、暫定復旧しても恒久修正は残ります。
日々の操作と、不具合の調査・修正
日々の稼働確認や定期処理を回す仕事が「運用」、不具合の調査・修正や更新が「保守」に当たります。名称より、対象システムと実際の作業を書き出す方が契約を比較しやすくなります。「請求書を入力する」のか、「請求書を出せない原因を調べる」のかでは、頼む仕事が違うからです。
契約不適合、報酬、協力義務など、契約時に整理する論点はIPAのモデル契約見直しのポイントに対応します。次の表は、頼みたい作業をその論点に分けて確認するための記入例です。
例えば「合意済みの計算式と異なる金額が出る」は不具合を疑う場面です。一方、「新しい承認ルートを増やす」は機能追加の依頼です。まず仕様書・受入時の記録と実際の動きを照合し、不具合か仕様変更かを切り分けます。元の開発契約に基づく修補の扱いと、今回の月額保守で請求する作業も混同しないよう確認します。判断が難しい条項は、契約本文をそろえて専門家に確認してください。
月額に含まれる仕事と、追加費用
見積書には「含む」「条件付き」「別料金」「対象外」を明記してもらいます。条件付きなら、件数や作業時間の上限、超過単価、承認方法まで決めます。対象外の作業が必要なら、対応できる事業者と契約を別途確認します。
表1 平日日中と休日利用の比較用の想定例
| 比較項目 | A:平日日中利用 | B:休日利用あり |
|---|---|---|
| 利用場面 | 平日日中の社内業務 | 平日・休日の受注業務 |
| 人の対応時間 | 平日9〜18時 | 平日9〜18時。土日祝9〜18時は重大障害のみ |
| 重大障害の着手目標 | 起算から対応時間内の累計2時間以内 | 同左。休日も重大障害なら対象 |
| 人による保守の月額 | 50,000円/月(税別) | 80,000円/月(税別) |
| 月額内の個別作業枠 | 合計4人時/月 | 合計4人時/月 |
| 条件外・不明 | 夜間・休日の有人対応は対象外。復旧所要時間は未定 | 夜間・休日の通常依頼は対象外。復旧所要時間は未定 |
重大障害は「受注登録が全員できず、代替手段がない状態」です。時刻は日本時間で、両案とも12月29日〜1月3日は有人対応の対象外です。月額内の4人時を超える作業には事前承認が必要です。
通常依頼・除外日・超過作業の計算条件
平日は土日祝を除きます。窓口へのチケット送信と自動監視は常時可能でも、人が動く時間は表のとおりです。通常依頼の調査着手は、有人受付日の翌営業日中を目標とします。
1人時は1人が1時間作業する量です。この例では問い合わせ、調査、暫定復旧、修正、更新に伴う連絡・検証を合算し、月4人時を超える分は事前承認後に税別10,000円/人時、0.5人時単位で切り上げて精算します。未使用枠は翌月へ繰り越さず、その月の作業に使います。監視設定の維持、既定のバックアップ結果確認、月次報告は固定費に含め、4人時の枠とは分けています。
表2 作業ごとの月額内外・別料金・顧客側で決めること(A・B共通)
| 作業 | 月額に含むか/受付・着手 | 別料金の条件/顧客側で決めること |
|---|---|---|
| 日々の入力・業務承認 | 対象外。自社が実施 | 入力代行が必要なら別契約。入力・承認担当を決める |
| 監視・通知 | 含む。常時自動監視/人の確認は表1の時間帯 | 監視対象の追加は別見積り。画面の応答と業務処理の成功を区別する |
| 問い合わせ | 条件付き。4人時内/通常依頼の時間帯 | 超過は事前承認。質問窓口と回答の対象範囲を決める |
| 障害調査 | 条件付き。4人時内/重大障害は表1の着手目標 | 超過は事前承認。対象環境、ログ、操作履歴を用意する |
| 暫定復旧 | 条件付き。4人時内/調査後に見込みを連絡 | 超過は事前承認。再起動・切り戻しの承認者と影響を決める |
| 不具合修正 | 条件付き。合意済み仕様の修正を4人時内で計画 | 超過は事前承認。期待する結果と試し方をそろえる |
| 更新 | 条件付き。評価・試験・適用を4人時内で計画 | 大規模な版更新は別見積り。停止可能時間と切り戻し条件を決める |
| 機能追加 | 別料金。仕様と納期を別途合意 | 承認ルート追加など。見積り承認前には開発を始めない |
| バックアップ結果の点検 | 含む。平日に前回以降の成否を見る | 対象追加は別見積り。取得成功だけで復元可能とは判断しない |
| データ復元・復元訓練 | 別料金。対象と日程を別途合意 | 復元対象・時点と業務照合担当を決める。所要時間は未定 |
「バックアップ確認込み」という見積りでは、データを戻す作業や復元訓練の扱いも質問します。対象・頻度・保管方法と復元手順の項目はIPAガイドライン第4.0版、冊子p.33(PDF)を参照し、各作業の担当と費用をそろえます。
クラウド利用料と、人の保守費を足し分ける
人に払う保守費と、サーバー・保存容量・外部サービス等の利用料は別の費用欄で見ます。同じ見積書にまとめられていても、内訳と増える条件を聞いてください。初期調査費や追加開発費も、毎月の費用と分けて比較します。利用料の側が何によって増えるかは、クラウドの月額費用の読み方で分けて説明しています。
表1の条件に、クラウド利用料15,000円/月、外部サービス料5,000円/月を加えます。通常月を個別作業2人時、対応増加月を6.5人時と仮定すると、次のようになります。増加分の作業は事前承認済み、初期費・追加開発費は含まない税別の計算です。
表3 同じ想定条件で比べる月額合計(税別)
| 月の条件 | A:平日日中利用 | B:休日利用あり |
|---|---|---|
| 通常月(2人時) | 70,000円 | 100,000円 |
| 対応増加月(6.5人時) | 95,000円 | 125,000円 |
対応増加月の追加費は、(6.5−4)人時×10,000円=25,000円です。同じ月額でも含む時間が違えば総額は変わります。金額だけでなく、待機する時間帯、使える作業枠、追加費用を一緒に読んでください。実際の料金は同じ対象・期間・税区分で見積りを取り直します。
「2時間以内に対応」は、何を始めるまでの時間か
受付は連絡の受領、着手は担当者がログの点検などの調査を始めることです。暫定復旧は切り戻しや代替手順で当面の業務を再開できる状態にすること、恒久修正は原因への修正を試験して反映することです。「2時間以内に対応」がどれを指すかを、時刻の起点とともに書面で確認します。
着手目標の起算・計測・未達時の扱い
表1の着手目標は、対応時間内なら指定窓口への到達時、時間外なら次の対象時間の開始時を起点とします。対象時間だけを累計するので、Aで金曜17時30分に届いた場合、月曜が営業日なら着手目標の期限は月曜10時30分です。金曜の30分と月曜の90分を合計する計算です。この2時間は調査を始めるまでの目標で、業務が復旧する時刻は別に確認します。
契約には、着手や復旧が目標なのか保証なのか、未達時の連絡・報告・減額等の扱い、計測を止める条件まで決めます。この例で定めるのは着手目標だけです。復旧所要時間は未定で、権限待ちの間も着手までの計測を続ける条件とします。見込み時刻は調査後に連絡し、遅れる場合は理由と次の報告時刻を更新する前提です。
クラウド側の稼働率の約束も、業務システム全体の復旧時間とは分けます。AWSのAmazon Compute SLAで定めるのは、対象となるEC2の可用性と、条件に応じたサービスクレジットです。その上で動く自社アプリの修正やデータ復元は、保守契約の範囲と復旧条件を別に確認します。
自社にも、承認と業務確認の担当が必要
保守会社の連絡先だけでなく、自社で障害を知らせる人、停止・切り戻しや追加費用を承認する人、復旧後の業務を確かめる人を決めます。休日も利用するなら、その時間に判断できる代理担当まで必要です。保守会社が画面を開けると確認しても、受注の重複や在庫のずれまで確認したことにはなりません。
連絡には、発生時刻、できない操作、影響する人・拠点、最後に正常だった時刻、直前の変更、表示されたエラーを添えます。ログ等は合意した安全な経路で渡し、パスワードや顧客情報を連絡票へ無造作に貼り付けない運用にします。
事故対応の役割・報告事項・連絡体制や外部との役割分担は、IPAガイドライン第4.0版、冊子pp.38–39(PDF)を参照できます。自社の連絡票にまとめる際は、「担当不在なら誰へ」「追加費用は誰がいくらまで承認できるか」を具体化します。この例では、月4人時を超える作業は承認を受けてから進めます。緊急時の例外を認める契約なら、作業と金額の上限を別途決めます。
例えば、保守対象外の会計サービスそのものの不具合修正は、本例では対応しません。自社システムとの接続部分の調査を頼むのか、会計サービス提供元へ連絡するのかを分けます。不明点は、現行契約・作業報告書・構成資料と、外部サービスの管理画面・公式サポート条件から確認します。不正アクセスの疑いがある場合も、単なる再起動依頼にせず、別途定めた事故対応担当へつなぐ前提にします。
休日利用や拠点追加が、契約を見直すきっかけ
平日だけだった業務を休日も始める、利用拠点や連携先を増やす、手作業へ戻せなくなる。このような変更があれば、以前の契約のままでよいかを点検します。毎月の作業報告で、使った人時、残る不具合、追加見積り、対象外だった依頼を確認すると、見直す箇所を絞れます。
次にすることは、止められない業務と利用時間を書き出し、現行の見積書・契約書を表2の作業に分けることです。月額内外、受付・着手、追加費用、顧客担当、未確認事項を保守先と埋め、合意日と版を残します。空欄を「含む」と推測せず、未確認の箇所は「不明」として質問してください。
Aのように休日の停止を待てるなら、休日の有人体制を付けない選択があります。Bのように休日も業務を続けるなら、その範囲を追加します。ただし「停止は2時間までしか許容できない」なら、2時間以内の着手目標だけでは足りません。復旧可能性の確認や代替業務の準備まで含めて相談する必要があります。月額とともに、自社が必要な作業と時間を満たすかで決めます。
保守範囲を整理して相談する
現行契約や見積書と照らし合わせる際は、保守範囲と費用の確認表(Excel)に、実際の条件を記入できます。架空の記入例と空欄版を分けてあります。
保守会社の変更も伴う場合は、他社開発システムの保守引き継ぎで調べることで、引き継ぎ前の資料・環境・権限の棚卸しを整理できます。
扱う情報や業務停止の影響から、権限と復旧に必要な発注条件も整理できます(小さな会社のシステム発注で確かめるセキュリティ)。
継続的な小さな修正や運用相談が必要になったら、対象の業務、利用時間、現行の見積書をそろえてご相談ください。NeoLogicの費用は個別見積りです。連絡方法・時間帯・作業範囲はご相談の内容に合わせて確認します。


