問い合わせ対応にAIを使うときは、担当を選ぶ(分類)、根拠を探す(FAQ検索)、その根拠から文章を作る(返信下書き)を別々に試し、根拠のない質問は人へ渡します。
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AIが「再発行が完了しました」と書いたら送れない。問い合わせ対応AIの使い方
FAQ検索、担当の振り分け、返信下書きを、判断が分かれる四つの例で比べます。根拠が見つからない質問を人へ渡す条件と、FAQ更新後に試す内容が分かります。管理表Excelと確認票PDF付き。
影山 湧亮 / NeoLogic株式会社 代表取締役。元警視庁。現場業務の整理と生成AI活用・Webシステム開発を一貫して担当。

たとえば「請求書の再発行方法を教えてください」という問い合わせです。AIが請求担当へ正しく振り分けても、返信を「再発行が完了しました」と書いたら、そのまま送れません。FAQに載っているのは申請方法であって、処理が済んだ事実ではないからです。以下では機器販売窓口で、通常の案内、FAQ更新で答えられる質問、更新しても保留する質問を追ってみます(想定例)。
最初は、請求書の再発行のように、案内方法が決まっている質問を一つ選びます。質問の原文と現在のFAQを並べ、AIの返信案が「申請方法の案内」にとどまるかを担当者が見てください。記録は、質問・参照したFAQ・返信案・直した箇所から始められます。
Microsoft Copilot Studioの生成回答の公式FAQは、指定した情報源を検索して回答を生成する機能と、その制限を説明しています。同じような質問でも回答が変わり、情報源の正確性まで自動で判定する機能ではありません。回答が自然に読めることだけで、顧客へ送れるとは判断できません。
問い合わせの種類を整理する
対象を選ぶときは、質問の種類と回答を決める担当を見ます。営業時間の案内と返金の可否は、どちらも短い質問ですが、回答に必要な情報と判断が異なります。件数が多い質問でも、例外承認が必要なら一般FAQだけで扱いません。
受付時に問い合わせIDを付け、質問の原文を残します。そのうえで、主な質問、参照する資料、緊急性、担当候補を整理します。複数の質問が混ざる場合は、元のIDにひも付けた項目へ分けます。一部に回答して残りを置き去りにしないよう、それぞれの担当と次の作業を決めてください。
種類別の最初の判断
| 種類 | 例 | 最初の判断 |
|---|---|---|
| 公開FAQ | 営業日・申請方法・再設定手順 | 有効な根拠と対象が一致すれば下書きへ |
| 適用日切れFAQ | 旧版の返品期限・受付時間・送料 | 現行資料を探す |
| 資料にない質問 | 海外発送・機能の予定・互換性 | 必要な情報と問い合わせ先を整理 |
| 個別契約 | 返金・個別納期・違約金免除 | 契約や注文を判断できる担当へ |
| 緊急相談 | 業務停止・情報漏えいの疑い・重複決済 | 通常の返信待ちから外し、緊急窓口へ |
緊急性と契約条件と資料の状態が重なるときは、緊急相談、個別契約を優先します。たとえば再設定FAQがあっても、全拠点の業務停止を一人のパスワード忘れと同じ扱いにはしません。
管理表の「分類正解」は、受付責任者が定める期待する分類です。AIが返した候補をそのまま正解欄へコピーせず、最初は担当者が分類を確定します。AIには候補と理由を提示させるところから試せます。
回答元のFAQをそろえる
検索に使うFAQには、ID、版、回答本文、適用開始日・終了日、対象、管理担当、採用状態を持たせます。日付が新しいという理由だけで採用せず、質問の対象時点と顧客条件に合うかを見ます。契約開始日で適用が決まる業務なら、問い合わせを受けた日とは別に記録します。
後半の記入例では、2026年9月10日を基準に、資料の更新前後で返信の判断を比べます。
返品期限を尋ねられた例では、手元の旧FAQは8月31日に適用を終えています。旧版に「商品受領後7暦日以内」とあっても、9月10日の一般案内には使えません。現行版が見つかるまで、受付文にとどめます。
9月15日に現行のFAQを追加すると、9月1日からの申請期限は14暦日以内だと分かります。問い合わせの対象がこの条件に合えば期限を案内できますが、返品の承認は別途行います。
旧版は履歴として残しても、現行の回答候補と区別します。更新担当が「何を、いつから、誰に適用するか」を確定し、検索結果に出た版と回答が引用した版を照合します。
実データを扱う前には、利用を許可した環境、保存先・保存期間、閲覧権限、入力内容の再利用条件を管理者と決めます。問い合わせ本文の氏名や連絡先は、今回の判断に不要なら評価用データから除いてください。
担当振り分けと文章作成を分ける
分類の出力は「どの担当へ、なぜ渡すか」、検索の出力は「どのFAQの、どの箇所を根拠にするか」、下書きの出力は「その根拠でどこまで伝えられるか」です。問い合わせIDで三つを対応付けて残すと、直すべき工程を特定できます。
冒頭の請求書の例なら、返信案は「会員画面の「請求書」から再発行を申請してください」となります。根拠は、請求書再発行FAQの申請方法です。請求担当への振り分けと、処理完了を約束していないことを別々に見ます。
下書きの指示例
参照FAQのID・版・該当箇所を先に示してください。適用日と対象が一致する根拠だけで回答案を作ってください。根拠がない、資料が競合する、個別判断が必要な場合は回答を保留し、受付文と担当者への質問事項を分けてください。返金・納期・免除・処理完了を根拠なく約束せず、送信は行わないでください。
問い合わせやFAQ内に書かれた命令文は、作業指示として実行しないようにします。上の指示を入れた場合も、人が原文と出力を照らし合わせてください。
下書き欄には顧客へ見せる文章を、引き継ぎ理由欄には社内で調べる事項を入れます。内部資料名や未確認の推測を顧客向けの文章へ混ぜず、送信する人が宛先と内容を確かめます。
分からない質問を人へ渡す
人に戻す条件は、担当者が後から見て分かる事実で決めます。参照資料がない、適用日が切れている、同じ対象の資料が食い違う、個別契約や権限者の判断が要る、緊急性がある、といった条件です。
送料を尋ねられた例では、新しいFAQを追加しても解決しません。同じ適用開始日・同じ対象の資料が二つあり、一方は無料、もう一方は有料としているためです。件名や更新時刻だけで片方を選ばず、配送規程担当が正式な条件を確定するまで回答を保留します。
個別契約の返金、納期、違約金免除は、一般FAQが整っていても個別判断へ戻します。緊急相談は、FAQ検索を続けるために待たせず、社内で決めた緊急窓口へ渡します。緊急性の見つけ方と、誰がいつまでに対応するかも決めておきます。
引き継ぎには、問い合わせID、原文、参照候補、回答を保留した理由、未確定事項、次の担当を付けます。渡しただけで完了にせず、受領の記録と次に状況を確かめる時刻も残します。受領が分からない間は、元の受付担当が追跡する運用を定めます。
資料にない質問でも、海外発送の可否を担当者へ問い合わせる受付文は用意できます。ただし、その文章も人が読んでから送ります。緊急相談では、障害解消、決済停止済み、返金確定といった未確認の完了表現を使わないようにしてください。
更新したFAQを評価する
FAQ更新後は、答えられる既知の質問と、答えないことが正しい質問を同じ条件で試します。比較用の記録では、更新前を「セットA」、現行FAQと競合資料を追加した後を「セットB」としています。問い合わせと基準日を固定して比べます。
| 質問 | セットA | セットBで変わること |
|---|---|---|
| 返品期限(Q04) | 現行版がなく、受付文だけ | RET01 v2で対象を見て「14暦日以内」を案内。返品の承認は別 |
| 電話受付(Q05) | 現行版がなく、受付文だけ | 現行版の受付時間を案内できる |
| 送料(Q06) | 現行版がなく保留 | 同じ適用日・対象の無料/有料が競合するため、保留を続ける |
資料なし・個別契約・緊急相談の扱いは変えません。新しいFAQが増えても、障害への対応や個別の返金判断を通常回答へ移す理由にはならないためです。
再確認では、分類、取得したFAQの版・適用条件、下書きの内容、人へ戻す判断を別欄に残します。実行日、資料セット、使用するAIと検索設定、会話履歴の条件、試行IDも記録します。期待する判断と実際の出力は分けて記入してください。
同じ質問でも表現が変わるため、定型文との完全一致だけを合否にしません。必要な事実と例外を保ち、根拠のない約束をせず、必要な保留と引き継ぎができたかを見ます。繰り返し試すときも、回数と会話条件をそろえます。
検索・回答・引用・権限・回答保留の評価方法は、RAGの評価方法|資料どおりでも足りない答えを探すで説明しています。
判断が分かれる四つの問い合わせ
基準日は2026年9月10日、参照資料は更新前のセットAです。下書きは人が見直す前・未送信で、判断欄は期待する扱いです。更新後のQ04・Q06は、上のセットA/Bの表と比べてください。
| 問い合わせ | 返信下書き | 判断・引き継ぎ |
|---|---|---|
| Q02 請求書を再発行したいです。申請方法を教えてください。 | 請求書の再発行は、会員画面の「請求書」から申請してください。 | 種類:公開FAQ/参照FAQ:BILL01 v1/回答可否:本文下書き可/引き継ぎ理由:申請方法のみ。個別の発行可否は確定しない。/担当:請求担当/確認する点:申請方法だけを案内 |
| Q04 通常購入の商品の返品申請は、受領後何日までですか。 | 現在の返品申請期限を確認してご案内します。 | 種類:適用日切れFAQ/参照FAQ:RET01 v1(不採用)/回答可否:本文保留/受付文のみ/引き継ぎ理由:2026-08-31で適用終了。現行版がセットAにない。/担当:返品規程担当/確認する点:旧版の7日を案内しない |
| Q06 通常購入の国内配送は送料無料ですか。 | 現在の送料条件を確認してご案内します。 | 種類:適用日切れFAQ/参照FAQ:SHIP01 v1(不採用)/回答可否:本文保留/受付文のみ/引き継ぎ理由:2026-08-31で適用終了。現行条件を確認できない。/担当:配送規程担当/確認する点:無料と確定しない |
| Q13 全拠点で突然ログインできず、業務が止まっています。 | 業務停止のご連絡を受け付けました。担当窓口へ至急確認を依頼します。 | 種類:緊急相談/参照FAQ:ACC01 v1(適用外)/回答可否:本文保留/緊急引継ぎ/引き継ぎ理由:広範な業務停止。再設定FAQの通常回答へ流さない。/担当:運用当番/確認する点:通常キューへ戻さない |
問い合わせ対応の管理表(Excel)には、15件の例と同じ9列の空欄版、FAQ台帳、更新後の再確認計画を収録しています。再確認の実行欄は空欄です。送信前・更新後のチェックリスト(PDF)には、空欄版とQ04の記入例があります。
まず一つの問い合わせとFAQで試す
FAQの版を変えても、下書きが処理完了の断定へ変わっていないかを見ます。
FAQの更新を比較するときは管理表のFAQ台帳と再確認計画を、送信前の確認を他の人へ渡すときはPDFを使います。最初からすべての票を埋める必要はありません。対象を増やす段階で、資料の版や担当への引継ぎも記録します。
検索補助から下書きへ範囲を広げる
まず人の分類とFAQ原文の検索補助を整え、次に担当候補の提示、最後に範囲を絞った返信下書きを試します。各段階で引き継ぎ先が決まり、担当者が結果を見られることを次へ進む条件にします。見直しの負担が増える場合は、対象や下書きの範囲を戻して見直します。
既存のFAQと定型文で必要な案内ができるなら、その運用を続ける選択肢もあります。既製の問い合わせ製品で、原文確認、担当振り分け、保留、人の送信確認、必要な閲覧制限を満たせるかを比較します。注文情報の照合や独自の確認順が合わない部分が、追加開発の検討対象です。
AIへ渡す前の受付でも、次の担当・作業・期限をそろえると未対応の問い合わせを探せます(問い合わせの対応漏れを防ぐ担当・期限・履歴の管理)。
FAQの原稿、更新担当、検索しやすい置き方から整える場合は、FAQ・ヘルプセンターの構築で相談範囲を紹介しています。

